From Paris/パリDAC通信第63号


2008年1月7日
謹賀新年:2006年ODA額と2010年ODA額シミュレーション


2006年ODA額と2010年ODA額シミュレーションがDAC事務局により公表されました。

1.2006年ODA額  

  • 2006年ODA額は、1044億ドル(約12兆円)。

  • 2005年ODA額から4.5%減。

  • アフリカ向けが4割、このうちサブサハラアフリカ向けが9割以上。

前年の2005年はナイジェリア、イラク向け債務削減とインド洋津波災害のための人道支援という特殊要因によりODA額が過去最高を記録した年であったため、2005年ODA額から債務削減を除いて比較した場合は、0.8%減となります。アフリカ向けの多くはナイジェリアへの債務削減分であり、債務削減を除くとアフリカ向けは13%増でした。

  • 最大の援助国はアメリカ、次いでイギリス、日本、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデン。

  • ODA額の国民所得比の平均は0.31%。

  • 国民所得比の国連目標0.7%を超えたのは、スウェーデン、ノルウェー、ルクセンブルグ、オランダ、デンマークのみ。

最大の援助国アメリカ(18.2%減)は、カナダ(9.9%減)、日本(9.1%減)などとともに債務削減の減少により前年を大きく下回っています。
一方、アイルランド(36%増)、オーストラリア(23%増)、スペイン(21%増)、スウェーデン(15%増)、イギリス(12%増)などが前年を大きく上回っています。
スウェーデンは国民所得比1%を超え、またEU諸国の国民所得比の平均は0.43%でした。一方、ギリシャ(0.17%)、アメリカ(0.18%)、イタリア(0.2%)、ポルトガル(0.21%)、日本(0.25%)、ニュージーランド(0.27%)、カナダ(0.29%)などが国民所得比の国連目標を大きく下回っています。

  • 2002年から2006年までのODA額の平均増加率は5%。

  • 2010年国際公約を達成するためには、今後12%の平均増加率の達成が必要。

2002年のモンテレイ開発資金会合で2010年までのODA増額の国際公約がなされましたが、この達成のためには増加率を加速化させる必要があることが明らかになっています。
なお、2007年ODA額の速報値は今年の4月頃にDAC事務局から公表される予定です。

2.2010年ODA額シミュレーション

DAC事務局のシミュレーションによると2010年ODA額は以下の通りとなります。

  • 2010年ODA額は1323億ドル(約15兆円)。

  • 最大の援助国はアメリカ、次いでドイツ、イギリス、フランス、イタリア、日本、スペイン。

  • ODA額の国民所得比の平均は0.35%。

  • 国連目標の国民所得比0.7%を超えるのは、スウェーデン、ノルウェー、ルクセンブルク、デンマーク、オランダ、ベルギー。

2006年ODA額と比較すると全体では27%増であり、ギリシャ(231%増)、イタリア(179%増)、ポルトガル(160%増)、スペイン(108%増)、ドイツ(57%増)、ベルギー(53%増)、フィンランド(42%増)などは大幅な増加、EUメンバー全体でも平均で43%増が見込まれています。
一方で、アメリカ(5%増)、デンマーク(8%増)、オランダ(9%増)などは、相対的に小さな増加に留まっており、日本は唯一減少(10%減)すると見込まれています。
またスウェーデン、ノルウェー、ルクセンブルクが国民所得比1%を超え、EU諸国の国民所得比の平均は0.57%となり、2005年にEU諸国が合意した0.51%の目標は達成が見込まれています。
一方で、アメリカ(0.17%)、日本(0.21%)、カナダ(0.3%)、ニュージーランド(0.33%)、オーストラリア(0.37%)などが国民所得比の国連目標を大きく下回ると見込まれています。

主な国の2010年ODA額は以下の通りです。

  • アメリカ:247億ドル、国民所得比は0.17%。

  • ドイツ:163億ドル、国民所得比0.51%。

  • イギリス:148億ドル、国民所得比0.56%。

  • フランス:125億ドル、国民所得比0.51%(2015年までに0.7%達成を目指す)。

  • イタリア:101億ドル、国民所得比0.51%。

  • 日本:100億ドル、国民所得比0.21%(2009年までの5年間で100億ドル積み増し)。

  • スペイン:79億ドル、国民所得比0.59%(2012年までに0.7%達成を目指す)。

このシミュレーションは2002年のモンテレイ開発資金会合や2005年のグレンイーグルスサミットにおける各国の国際公約等をもとにしています。2008年秋にはモンテレイ開発資金会合のフォローアップ会合が開催される予定であり、国際公約の途中経過が議論される予定です。

(シミュレーションの詳細はhttp://www.oecd.org/dataoecd/7/20/39768315.pdfをご覧下さい。)

(パリDAC通信担当:吉田 徹)


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