From Paris/パリDAC通信第52号


2006年10月19日

対オランダ援助審査からみたDAC −その1−


先月、DACにおいて、オランダの開発問題に対する取組み状 況(援助政策・実施状況等)に関する審査「援助審査」(Peer Review )の結果が発表されました。パリでは、「front runner」と称され、革新的な援助政策 ・実施で知られるオランダ。今回、この「審査」でDACを代表 して審査国を務めたのは、(筆者の見る限り、DACの場では、 何かとオランダと対立していると見られることが多い)日本・ (筆者の見る限り、DACでは、しばしば援助の優等生といわれ る)スウェーデン。 筆者も、審査国代表の活動の補佐を通じて、側面的ながら、こ の「審査」に関わる機会を得ることができました。そこで、こ の経験を通じて見えてきた「DACの援助審査」、「オランダの 援助」、そして、「DACそのもの」、に関する様々な点につい て、何号かに分けてご紹介したいと思います。

1.「ピアレビュー」って何?
DACでは、4〜5年の周期で、メンバー国の開発問題に対する取 組み状況(援助政策・実施状況等)に関する審査、「援助審査」を実施しています。この「援助審査」は、DACメンバー国の 中から2カ国が、DAC全体の代表として、審査国を務め、結果はDAC メンバー全体で議論されます。同僚・仲間による審査。なのでDAC ではこの「援助審査」をピアレビュー(Peer Review)と称し ているのです 。 (ちなみに、ピアレビューは、OECDのDAC以外の多くの委員会でも実施されています。しかし、援助に関してこのようなレビ ューを恒常的・体系的に行っているのは、現時点ではDACだけだと思われます。)。

2.何を審査するの?
「援助審査」は間違えかもしれない・・・。 実は、「援助審査」で審査されるのは、メンバー国の援助政 策、体制、実施状況だけではありません。DACでは、Peer Review は「当該国全体の、途上国の開発問題全般に対する取組み」を審査するといいます。ここでいう「当該国全体」というのは、 援助担当の省庁もしくは機関だけでなく、当該国の関係省庁
、NGO ・ビジネスを始めとした市民社会全体を指します。また、「開 発問題全般に対する取組み」としてある(「援助における取組み」ではない)のは、これまでにもパリDAC通信でご紹介さしあげ た、「開発問題に取り組むには、貿易、投資、環境等の援助以 外の分野を含む包括的な視点・対応(政策一貫性)が不可欠」 というOECDの考え方(http://www.devforum.jp/archives/paris/046.htmhttp://www.devforum.jp/archives/paris/047.htm)が背景にあります 。すなわち、開発援助そのものだけでなく、開発に影響を与え るその他の分野の取組みについても審査されるのです。 このような考えに基づき、「援助審査」では、主に、以下の ような点に関して包括的な審査が行われるのです。

  • 開発に対する政策枠組み一般(政策状況、開発に対する世論 の状況等)
  • 援助量・配分(国・セクター・援助チャンネル(バイ・マル チ・NGO等)別の配分状況・戦略等)
  • 優先セクター・特定分野における取組み状況
  • 開発に向けた政策一貫性に対する取組み状況
  • 組織・マネジメント
  • 途上国現場での実施状況
  • 人道援助

(パリDAC通信担当 寺門 雅代)

 


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2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development Co-operation
1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム
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4月18日16号「DACハイレベル会合 報告」
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