From Paris/パリDAC通信第45号

2006年1月25日
スケールアップに関する議論 
−続編−
(第2回 DAC・世銀スケールアップ会合)


 今回は、第43号でお伝えした「スケールアップ」に関する議論の続編として、DAC・世銀共催援助のスケールアップに関する会合(昨年12月6日、於パリ)の報告です。
 今回会合では主に、(1)援助資金の予測性・柔軟性強化(課題:ドナーが、3~5年の見通しに関して信頼できるデータを出せるかどうか)、(2) 調和化・アラインメント、成果重視への取組み強化、そのためのCGの利用・強化、といった点が議論されましたが、今回は、前回会合(9月)に比べ、より多くの国々が慎重な意見を出していたという印象があるように思われます。

今次会合の議論に際し、事務局側(OECD、世銀)より、上記(1)援助の予測性を高める方策として、パイロット国を選び、その国々に対する3〜5年先の援助見通しをドナーが通知するしくみや、ドナーが自国の優先援助国等に関する状況を提供し、ドナー全体でまとめて途上国と共有する仕組みに関する提案がだされました。また、併せて(2)の強化も図る仕組みとして「Results and Resources CGs/RTsイニシアティブ」(パイロット国を選定の上、CGやRTの機能を強化し、援助予測性向上、アライメント強化等を目指す)といった提案も世銀より提示されました。

メンバー国での議論では、英・蘭以外、多くのメンバー国が、援助予測性向上の有用性・重要性、事務局提案の方向性に賛同しつつも、「長期的な援助見通しに関する情報提供等は、バイドナーにとって困難な点も多い」、「援助のスケールアップは重要だが、国内予算縮小への圧力等の事情に鑑み、ドナーにとっては難しい課題でもある、「『パリ宣言』等の援助効果向上の成果を同時に示すことも重要」、「他の同様の情報収集メカニズム(特に、EU諸国の国別・セクター別の援助コミットメント額や優先国・援助形態に関する情報収集を行っているEC)との重複は避けるべき」、「本件作業で収集した情報・データの公開には反対」等、多くの慎重な意見が出されました。

 議論の結果、議長より、援助予測性向上のためのデータ・情報収集については、「modest」なアプローチで行うこと、既存メカニズムを利用すること、収集されたデータはまずは内部関係者のみで共有すること、を改めて確認し、世銀・DAC事務局・国連に対し、ドナーの対応可能性にも配慮しつつ、収集すべき情報の内容を検討し、その他本件作業の具体的な手法に関する提案を作成するよう取り纏めました。本件は、明年春の世銀・IMF合同開発委員会のタイミングで第3回会合を開催し、右提案を議論することとなりました。
 
 外野からみると、結局決まったのはこれだけ?といった印象かもしれませんが、やはり英・蘭以外のメンバー国にとっては、国内の予算プロセスの関係、その他(特に国別配分の話については)政治的な要素も関係する難しいアジェンダだ、という現実が共有された、ということでしょうか。。。

 さて、おまけになってしまいますが、先日「Geographical Distribution of Financial Flows to Aid Recipients 2000-2004」という出版物がDACより発行されました。これは、途上国から見たODA量(及びその他の資金の流れ等、例えばタンザニアにおけるトップドナーは?日本のタンザニアに対する過去数年のODA量はどう推移しているか)が記載されている資料で、まさにスケールアップで議論している「ある途上国におけるODA及びそれ以外の開発関連資金総体がどうなっているか?」という点がわかる面白い資料です。興味のある方はウェブサイトより注文ができますのでどうぞ。

(パリDAC通信担当 寺門雅代)


バックナンバー

2005年

12月11日第44回「質問:ブルガリアに派遣されている青年海外協力隊の費用は、『ODA』でしょうか?
       (「DACリスト」改訂)
11月28日第43回「スケールアップに関する議論
11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合−
9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック
9月6日第40回「9月国連総会(首脳会合:World Summit)とOECD/DAC
8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)
7月22日第38回「パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ
6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)
4月18日第34回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その3 能力開発)
3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 )
3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム
2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development Co-operation
1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム
1月11日第29号「DACアウトリーチ戦略(その2)

2004年

12月14日第28号DACシニアレベル会合(SLM)
11月16日第27号「開発援助における評価の方向性
10月29日第26回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その4 調達キャパビル)−
10月15日第25回『ニカラグア通信:現場から見た調和化・アラインメント
10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
7月28日第22回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その1)−」
7月12日第21回「ODAでCO2排出権を買えるのか?」
6月12日第20号MDGsへの貢献はどう図るべきか?
5月30日第19号「対フランス援助審査」

5月18日第18号「OECD閣僚理事会(5/13-14)」
5月4日第17号 「援助量と援助効果の向上」

4月18日16号「DACハイレベル会合 報告」
4月6日15号「DACハイレベル会合(4/15-16)・予告編」

3月14号

2003年

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10/11月12号
7月21日11号

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4月28日第6号
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