From Paris/パリDAC通信第44号

2005年12月11日
「質問:ブルガリアに派遣されている青年海外協力隊の費用は、『ODA』でしょうか?」
(「DACリスト」改訂)


「ブルガリアに派遣されている青年海外協力隊の費用は、『ODA』でしょうか?」・・・答えは、NO。理由は、DAC統計で『ODA』とされるためには、「DACリスト」というODA受取国を記載した、リストの中で、ODA受取国とされる必要があるのですが、ブルガリアは、そうでないからです。

今回は、DAC統計でODAカウントされるODA受取国を定めた「DACリスト」、そしてその改訂についてご紹介差し上げたく思います。

1.「DACリスト」とは?
(1)「DACリスト」とは、DACでのODA統計収集のために、ODA受取国を定めたリストです。ある国における開発関連の支援活動が、DAC統計上、ODAとされるためには、まず、本リストの中で「ODA受取国」とされている必要があります。  
(2)現時点での本リストには、「ODA受取国」に加え、「移行国」といわれる、DAC統計上はODAとはカウントされない、「Official Aid」といわれる資金フローを受け取っている国が記載されています。(これまでの改訂の歴史はこちらをを参照。)

2.今回の「DACリスト」改訂
(1)「DACリスト」は通常、リスト記載国の所得分類の変化等に基づき、3年に1回見直されます。右見直し年にあたる本年は、通常の見直しに加え、「「移行国」の位置付けが分かりづらい」、「世銀・国連等の他の途上国リストとの関係が不明瞭」等の理由から、右「移行国」の削除を行い、「リスト」に掲載する国は、純粋にODA受取国のみとする、「リスト」簡素化のための議論がDACで行われ、結果、12月7日のDACシニアレベル会合で新DACリストが採択されました。
(2)上記議論の中では、「移行国」のうち、いずれを削除するか、もしくは新「DACリスト」に含めて、ODA受取国とするか等が最大の争点となりました。当初、これまでの「移行国」のうち、G8(ロシア)、EU加盟国、EU加盟見込国(EUとの正式な交渉が開始されている国)を削除する点は比較的容易に合意ができたものの、ベラルーシ、ウクライナ、リビアに関しては、所得分類は「DACリスト」のODA受取国の所得分類(Lower Middle Income CountriesやUpper Middle Income Countries)にあてはまるものの、これまで「移行国」だった国が、今回の改定により初めてODA受取国となることにつき、一部の北欧諸国が反対しましたが、議論の結果、今回のSLMで、右3国を含める形で新「DACリスト」が採択される運びとなりました。

3.「DACリスト」の今後・・・?
(1)今回の改訂の結果、新「DACリスト」は2005年の統計から適用になりますが、一方、一部の国は既に次回の改定(3年後)に 向け、新たな議論を行いたいとしています。その「一部の国」とは、上記3国を新「DACリスト」から除外すべきとしていた一部の北欧諸国。彼らの問題意識として、『そもそも、「DACリスト」に入る国=ODA受取国は、より所得の低い国々のみにすべき』(poverty focusが必要)という考えがあり、今回は、新「DACリスト」の採択に賛成するが、そもそものDACリストのあり方について、政治レベルで議論をすべきと主張、結果、来年4月のDACハイレベル会合で、本件議論を行うことになったのです。
(2)上記のような考え方に対し、真っ向から反対する国は、殆どありませんでしたが、例えば、これまで、DAC非加入のOECD諸国(例 チェコ)は、上記3国における支援実績が比較的多いため、新リストに3カ国を含める判断を支持していましたこと、また、今次改定をもってDACリストからはずれた「移行国」の一部でも、貧困問題は残るため、DAC統計上ODAとはカウントされないものの、引き続き何らかの支援を行っていく必要がある(よって、国内的には、DAC統計上はODAではないものの、国内予算的には、開発関連支援の予算として活動を行う等)とする国等があったたこともあり、引き続き「DACリスト」のあり方については、引き続き議論が分かれる見込みです。

(パリDAC通信担当 寺門雅代)


バックナンバー

2005年

2005年11月28日第43回「スケールアップに関する議論
11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合−
9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック
9月6日第40回「9月国連総会(首脳会合:World Summit)とOECD/DAC
8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)
7月22日第38回「パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ
6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)
4月18日第34回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その3 能力開発)
3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 )
3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム
2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development Co-operation
1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム
1月11日第29号「DACアウトリーチ戦略(その2)

2004年

12月14日第28号DACシニアレベル会合(SLM)
11月16日第27号「開発援助における評価の方向性
10月29日第26回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その4 調達キャパビル)−
10月15日第25回『ニカラグア通信:現場から見た調和化・アラインメント
10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
7月28日第22回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その1)−」
7月12日第21回「ODAでCO2排出権を買えるのか?」
6月12日第20号MDGsへの貢献はどう図るべきか?
5月30日第19号「対フランス援助審査」

5月18日第18号「OECD閣僚理事会(5/13-14)」
5月4日第17号 「援助量と援助効果の向上」

4月18日16号「DACハイレベル会合 報告」
4月6日15号「DACハイレベル会合(4/15-16)・予告編」

3月14号

2003年

12月13号
10/11月12号
7月21日11号

7月7日10号
6月22日9号
6月9日8号
5月5日7号
4月28日第6号
4月17日第5号
4月7日第4号
3月31日第3号
3月24日第2号

3月10日第1号

Top