From Paris/パリDAC通信第50号


2006年6月13日
続・一般財政支援の効果はいかに?


 今回は、前回パリDAC通信でお伝えした5月9日、10日OECDにおいて行われた「一般財政支援(GBS)の合同評価に関する会合」及び評価報告書に対する各国の主な反応、フォローアップについて簡単にお伝えします。(報告書全体及び同会合でのプレゼン資料等についてはwww.oecd.org/dac/evaluationnetworkより入手可能です。)

○ 合同評価に対する反応

殆どの参加者より、本件合同評価について、特にその独立性・共同性について評価が示されました。複数のドナー国は、本件評価結果を内部のGBS実施可否検討に参考にしたい旨コメント。また、評価フレームワーク自体については、GBSに関する評価を行う際には、比較対照を可能とするために、今後も(改良を加えつつも)同じフレームワークを用いるべきとの意見もありましたが、一方、例えば評価対象項目等評価フレームワークが重すぎるため、直ちにどこでも適用できるフレームワークとはいえない、といった意見も出されました。

○ 各論

多くの参加者国より、今回の会合では、GBSそのものが(プロジェクト型に比べて)優れているといった優劣論ではなく、GBSがいつ、いかに機能するか、どのように他の援助モダリティとの補完性を高めて、援助効果を向上させるか、といった建設的な議論を実施できたとの評価がありました。

会合の議題項目については、主に以下のような概要の議論が行われました。

「What effects has GBS had?」

@GBSは、途上国の予算計画・公共財政管理能力の強化、そして保健・医療等社会分野への予算支出を増大させる効果があった、A一方、貧困削減、経済成長に対する直接的なインパクトについては(因果関係)については実証できなかった、といった評価結論について、参加者の支持が示されました。

「When and how should GBS be used?」

「Ownership, dialogue, conditionality and indicators」

「Risk and risk management」

・ GBSを導入し、効果を発揮させていくための条件として、途上国側のオーナーシップ、政治的コミットメントの存在、ガバナンス能力、更にマクロ経済の安定性等が指摘されました。幾つかの国から、右条件の診断は、ドナー共同で実施すべき、各途上国の諸条件について柔軟性のある手法で実施すべき等の意見がだされました。また、途上国の能力開発の必要性を指摘する意見は複数出されました(但し、具体的にどういった能力をどのように支援していくかまでには議論は至らず)。

・ GBS実施のコンディショナリティに関しては、その必要性を支持するものの、GBSの予測可能性・支援の継続性、途上国への過度な負担増等の観点から、設定・適用とも柔軟性を持たせ、コンディショナリティ達成のための改革に関する途上国側との政治対話を促進すべき、との意見も幾つかだされました。

・ 貧困削減等の開発目標の達成には、GBSと他の援助モダリティとの相互補完性を重要とする意見が複数示されました。

・ 途上国政府自身の国内に対するアカウンタビリティー強化に関する関心が多く示されました。右強化のために、市民社会の役割・能力強化の必要性を指摘する意見も幾つか出されました。

○ 今後

 では、一体GBSに対するドナーの取り組みは今後どうなっていくのでしょうか?本件評価結果を受け、「あなたはGBSを行いますか?増やしますか?」「今後GBSを更に効果敵に実施していくために今後どういった取り組みを行いますか?」といった問いに対する各国の反応は?

会合ではこのような直接的な議論はなされませんでしたが、その後のDAC関連会合等における各国コメント等では、極端な例としては、既にGBSに取組んでおり、GBS増加の政治的なコミットメントがあるドナー国のうち一部(欧州)は、「とにかくGBSを更に増やすべし」という意見を述べたり、一方、逆の立場にある国は「本件会合の結論としてGBSをより増やして援助をスケールアップすべしといったメッセージを出すことに反対」といった防衛線をはったりといった模様。

その中間(?)にある国々は、未解明の点についてより研究を進めて、GBSを積極化的に進めるのか、もしくはGBSに取組まない判断を下す材料を、時間をかけて検討していく、という感じでしょうか。(もちろん積極派としての政治的決断がある国であっても、自国国内の説明責任の観点から、GBSの効果、リスク一般に対する評価は引き続き行いたい意図有り。)DACに出されたフォローアップ案としては、GBS実施ガイダンス作成、各モダリティやドナー間の補完性に関する研究、貧困削減・経済成長との関係に関する評価、脆弱な国家におけるGBSの実施方法に関する研究等の作業等に関心が集まっている様子です。今後、DAC全体のその他の活動項目とのバランスをみつつ、検討が進みそうです。

○ おまけ:DAC外からの評価

今回会合には、Oxfam等複数のNGOも参加。会合後、今後のGBS実施のために注意すべき点(説明責任、財政規律と援助予測性、公共財政管理等)・recommendationをDAC議長に提出するなどの反応がありました。

 その他、英ガーディアン紙BBCでも本件評価が取り上げられました。

(パリDAC通信担当 寺門雅代)


バックナンバー

2006年
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5月15日第48回「一般財政支援の効果はいかに?
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12月11日第44回「質問:ブルガリアに派遣されている青年海外協力隊の費用は、『ODA』でしょうか?
       (「DACリスト」改訂)
11月28日第43回「スケールアップに関する議論

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8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)
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6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)
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3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 )
3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム
2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development Co-operation
1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム
1月11日第29号「DACアウトリーチ戦略(その2)

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12月14日第28号DACシニアレベル会合(SLM)
11月16日第27号「開発援助における評価の方向性
10月29日第26回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その4 調達キャパビル)−
10月15日第25回『ニカラグア通信:現場から見た調和化・アラインメント
10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
7月28日第22回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その1)−」
7月12日第21回「ODAでCO2排出権を買えるのか?」
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5月30日第19号「対フランス援助審査」

5月18日第18号「OECD閣僚理事会(5/13-14)」
5月4日第17号 「援助量と援助効果の向上」

4月18日16号「DACハイレベル会合 報告」
4月6日15号「DACハイレベル会合(4/15-16)・予告編」
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