2025年9月16日発行 http://www.devforum.jp/
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ワシントンDC開発フォーラム・情報サービス dev-info
皆様の同僚・知人への転送大歓迎いたします。
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【1】 ワシントンDC開発フォーラム便り
「ユニコーンはこない」藤本千尋 (世界銀行・シンガポール)
【2】ワシントンDC開発フォーラム新着情報チェック
- 8月31日にアフガニスタン東部で発生した地震による被害に対して、国際協力機構(JICA)は、緊急援助物資の供与を決定し、供与物資が国際赤十字・赤新月者連盟(IFRC)に引き渡されました(記事)。
- 国際金融開発機関は、気候変動に関するグローバスファイナンスが、前年度から2024年度に33パーセントアップしたと報告されています(記事)。
- UNAMAは、地震に見舞われたアフガニスタンで政権が女性の救助者を認めないことで女性の救助に支障が出ていると報告しています(記事)。
- 国連は、軍事支出に関するレポートを出版し、2024年の世界の軍事支出は2兆7千億ドルと過去最高を記録したと報告しています(記事)。
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【1】 ワシントンDC開発フォーラム便り
「ユニコーンはこない」藤本千尋 (世界銀行・シンガポール)
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先日、普段とは違うチームの同僚と一緒に出張をしたのですが、彼らが手がける仕事が、私の知らない世界で非常に興味深かったのです。
世界銀行は、主に「世銀債」という債券を発行して資金を集めていますが、彼らが扱っていたのは、それとは一線を画す「アウトカム・ボンド」という特別な債券でした。何が特別かと言うと、通常の債券のように金利が固定されているのではなく、特定のプロジェクトが成功するかどうかで金利が変動する仕組みになっています。さらに面白いことに、そのプロジェクトは世銀の融資先に限らず、民間企業が対象になることもあるのです。
最近の事例では、アマゾンの森林再生プロジェクトが対象となりました。これはMombak社という民間企業が森林を再生させる事業で、世銀債を購入した投資家のお金が、この事業に直接活用されます。
投資家にとっては、当初受け取る金利が少し低いというリスクがあります。しかし、もし森林再生が成功し、そこから「炭素クレジット」が生まれれば話は変わります。そのクレジットを企業が購入する契約があるので、その売却益が投資家への追加の金利として還元されるのです。つまり、社会的に良い活動が、金銭的なリターンとしても報われる可能性がある、という仕組みです。成功すれば、通常の世銀債より高い利回りも期待できます。
そして、この特別な債券を販売する現場が、私の普段の業務とは全く異なり、大変刺激的でした。どのような組織でも、新しい取り組みを「必ず実現する」と強く推進する方がいらっしゃいます。この新しい債券を投資家に購入していただくためにも、まさにそのような「チャンピオン」を見つけ出すことが鍵でした。お相手は、投資会社の意思決定者であったり、サステナビリティ担当の熱意ある方であったり、様々です。
もちろん、交渉は簡単ではありません。投資家の皆様からは、「もう少し金利が高ければ」「もう少し年限が長ければ」「違う通貨建てであれば」といった、理想的な条件に関するご要望を数多くいただきます。誰もが完璧な投資先、つまり「ユニコーン」を探しているのです。しかし、ある同僚が語った「ユニコーンを待つこともできるが、それは現れないかもしれない」という言葉が非常に印象的でした。完璧な条件が揃うのを待つのではなく、今ある最善の選択肢に投資を決断することの重要性を物語っていました。
一度の打ち合わせで良い結果が得られなくても、諦めずにアプローチを続けると、担当者が代わったり、別の方が興味を示してくださったりして、急に話が進展する瞬間があります。それは本当にドラマチックな光景でした。
また、投資家にとっても、この債券の購入は簡単なことではありません。プロジェクトについて深く理解し、事業が本当に成り立つのかを非常に細かく吟味する必要があります。そのため、投資を決定するまでに膨大な時間がかかります。それでも、その手間をかけてでも「世の中にとって重要であるにもかかわらず、資金が不足している分野」を応援したいと考えてくださる方々がいるのです。
このように、多くの人々が関わり、時には何年もかけて一つの金融商品を創り上げていく。その先で、世界が少しでも良くなる方向へお金が流れることを信じて突き進む同僚たちの姿が、とても格好良く見えました。普段の彼らの物静かな印象とのギャップもあり、より一層心に響いたのかもしれません。
世界の開発金融を取り巻く資金調達は残念ながら厳しくなっています。ですがこのような新しい挑戦は、普段のうつうつとした気分を吹き飛ばす大変貴重な出張でした。
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【2】 開発フォーラム新着情報チェック
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┌――┐Dev-Info 新着情報チェックでは掲載情報を
|\/│募集しています。情報掲載を希望する場合は、
└――┘こちら までご連絡ください。
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– 日本関連 –
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- 国際連合食糧農業機関ソマリア事務所代表との間で、ソマリア連邦共和国に対する供与額2.89億円の無償資金協力「モガディシュの漁業コミュニティにおける持続可能な漁業管理及び漁獲後処理のための拠点整備計画(FAO連携)」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
- 駐ローマ国際機関日本政府代表部特命全権大使兼イタリア共和国日本国特命全権大使と世界食糧計画事務局次長との間で、スーダン共和国に対する供与額4億円の無償資金協力「食糧援助(WFP連携)」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
- 8月31日にアフガニスタン東部で発生した地震による被害に対して、国際協力機構(JICA)は、緊急援助物資の供与を決定し、供与物資が国際赤十字・赤新月者連盟(IFRC)に引き渡されました(記事)。
- 外務省国際機関人事センターは空席情報を更新しました(記事)。
- 外務省は、各種分野の任期付き職員、非常勤職員を募集しています(記事)。
- 開発に関する人材募集情報がPartnerページに掲載されています(記事)。
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– バイ・ドナー関連 –
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- 英国は、ウクライナのエネルギーインフラに対する支援を発表しました(記事)。
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AFDは、若年層の失業問題と高齢者向け介護サービスの需要増という課題に直面するモロッコにおいて、若者に介護職の訓練を提供しています(記事)。
●GIZのHPに、チェコ開発庁のミンチェフ長官のインタビュー記事が掲載されています(記事)。
●インパクト・ファンド・デンマークは、ラテンアメリカ農業ビジネス開発公社(LAAD)に1億9100万クローネを投資し、小規模農家のグリーン成長を支援します(記事)。
●欧州委員会(EC)のシケラ国際パートナーシップ担当委員はフィジー、バヌアツ、パプアニューギニアを訪問し、同地域に対する3億ユーロ規模の投資を発表しました(記事)。
- カナダはアフガニスタン地震への対応として人道支援の提供を発表しました(記事)。
- 豪州は、中国との間で第9回豪中ハイレベル対話が北京で開催しました(記事)。
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– 国際機関関連 –
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- 国際金融開発機関は、気候変動に関するグローバスファイナンスが、前年度から2024年度に33パーセントアップしたと報告されています(記事)。
- OECDは、教育に関する報告書” Education at a Glance 2025”を発表し、OECD諸国のほぼ半数が高等教育を修了していると指摘いています(記事)。
- 世界銀行は新報告書” Reboot Development: The Economics of a Livable Planet(開発の抜本的見直し:居住可能な地球の経済学)”を発表し、世界人口の90%が土壌劣化、大気汚染、水不足のいずれかに直面しているが、自然システムの復元は可能であり、大きな恩恵をもたらし得る、との見解を示しました(記事)。
- 世界銀行は、グアテマラの財政支出監理の向上支援を目的とした5000万ドルのプロジェクトを承認しました (記事)。
- アジア開発銀行の神田総裁は、太平洋諸島フォーラム首脳会議に続き、各国首脳から同地域の開発に関する共有のビジョンの必要性について聴取しました。その対応として、太平洋諸島各国とのパートナーシップにおける重要な変更点を示すとともに、2024年における1億4,900万ドルに上る過去最高規模のコミットメントや、インフラ調達および民間セクター開発に向けた新たな手法を強調しました(記事)。
- 米州開発銀行は、ベリーズの雇用と労働市場参加促進を目的とした800万ドルのプロジェクトを承認しました(記事)。
- OHCHRは、コンゴDRCで紛争時の性暴力の被害者に対する支援が資金難により滞っていると報告しています(記事)。
- WMOは、気候変動と大気汚染を分析した報告書を出版しました(記事)。
- ユニセフは、ODA資金のカットにより新たに600万人が不就学になる恐れがあると分析しています(記事)。
- 国連は、南南協力について解説した記事を出しています(記事)。
- UNAMAは、地震に見舞われたアフガニスタンで政権が女性の救助者を認めないことで女性の救助に支障が出ていると報告しています(記事)。
- WFPは、学校給食に関する報告書を出版しました(記事)。
- UNHCRは、洪水により南スーダンで10万人を超える避難民が発生していると報告しています(記事)。
- 国連は、軍事支出に関するレポートを出版し、2024年の世界の軍事支出は2兆7千億ドルと過去最高を記録したと報告しています(記事)。
- 国連は、紛争と子供への暴力を分析した年次報告書を出版し、学校への襲撃など状況が悪化していると報告しています(記事)。
- UNHCRは、シリアで80万の難民と170万の国内避難民が帰還しており再建支援を訴えています(記事)。
- OCHAは、イスラエルがガザシティに侵攻を始めたことで新たに10万人近くの避難民が発生していると報告しています(記事)。
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-シンクタンク・NGO・財団関連 –
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- NGOスタディ・プログラム研修員の追加募集が始まりました、締切は10月30日(記事)。
- HAPIC2025が11月17日から開催されます(記事)。
- Oxfamは、先進国は東アフリカが気候変動対策で必要としている資金の4%しか支援できていないと報告しています(記事)。
- Save the Childrenは、マダガスカルで干ばつ状況が悪化し子供の栄養不良が50%増加していると報告しています(記事)。
- Save the Childrenは、内戦の最中にあるスーダンで3/4の子供が不就学状況にあると報告しています(記事)。
- Save the Childrenは、洪水に見舞われているパキスタンでパンジャーブ州から100万人の避難民が出ていると報告しています(記事)。
- 英ODIは、ミャンマーにおける人道支援についての報告書を発表しました(記事)。
●英IIEDは、地域主導の適応(Locally Led Adaptation)を業務に適用するためのガイダンスを発表しました(記事)。
●英IISDは、WTOの違法漁業への補助金禁止協定が9月15日に発効したことを受けてコメントしています(記事)。
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「メーリングリスト(devforum)」
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2025年9月16日発行