【dev-info】 2025年6月24日号(G7、2026年の国際協力予算を2024年度比で約30%減らす見込み 他)

2025年6月24日発行 http://www.devforum.jp/  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ワシントンDC開発フォーラム・情報サービス dev-info
 皆様の同僚・知人への転送大歓迎いたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】 ワシントンDC開発フォーラム便り
 「Navigating the uncharted waters –未踏ルートの拓き方」 田中幸夫(世界銀行・ワシントンDC在住)

【2】ワシントンDC開発フォーラム新着情報チェック
●欧州連合(EU)とインドは、第三国における開発協力を推進することに合意しました。持続可能な開発のためのデジタル化などが優先分野に挙げられています(記事)。
●豪州政府は、中国と共に第8回太平洋ハイレベル協議を開催し、気候変動への適応と回復力、安全保障、漁業・海洋問題、太平洋全域の経済開発など、地域の優先事項に関する様々な意見交換を行いました(記事)。
●国連は、紛争下における子供の権利の侵害が昨年は4万件を超え、一昨年比でも25%も増加したと報告しています(記事)。
●Oxfamは、G7は2026年の国際協力予算を2024年度比で約30%減らす見込みであるが、これを減らさないように訴えています(記事)。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】 ワシントンDC開発フォーラム便り
 「Navigating the uncharted waters –未踏ルートの拓き方」 田中幸夫(世界銀行・ワシントンDC在住)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
自分の考え方や価値観に多大な影響を与えた「恩師」と呼べる存在が、私の人生には何人か存在します。歳をとると共にそういった出会いは減る傾向にありましたが、40代半ばにして幸運にも素晴らしい師に巡り合うことができました。このコラムは私がその師とともに前例のない仕事に取組み、多くのことを学んだという話です。

敬愛するその師のことを仮に「G氏」と呼びましょう。G氏は職場の同僚のアメリカ人で、過去27年にわたり世界銀行(以下、世銀)に勤め、私と同じ水資源分野を専門とし、何十ものプロジェクトを手掛けてきた百戦錬磨のつわものです。インドのとあるプロジェクトで彼はプロジェクトリーダー、私は副リーダーを務めています。

そのプロジェクトでG氏が着想したのが「インドが世銀からグラント(贈与金)として受け取るお金の一部を隣国のブータンに再贈与し、ブータンにも事業を実施してもらう」というものです。大義はあります。紙面の都合上事業の詳細は割愛しますが、ブータンはインドと河川を通してつながる上流国であるため、ブータン国内で行うその事業は下流国であるインドにも裨益します(ブータン自身にとっても役立ちます)。しかし、如何せん前例がありません。当然それを実施するための制度的枠組みもありません。

私も含む多くの組織人が新しいことに取り組む際にまず考えるのが、関連する先行例を探し、それを新事業承認の根拠とすることです。しかし、本件では先行事例は全くありません。次に思いつくのは自組織の意思決定者(=偉い人)にリスクを取って承認してもらうことですが、普通まともな組織人はそんな粋な真似はしてくれません。しかし、G氏のアプローチは違いました。G氏は世銀内で本件が承認される前に、インド政府側に構想を共有し、根回しを展開させたのです。直接のカウンターパートである州政府から中央政府のライン省庁、次に中枢である財務省や外務省、さらにはブータン政府へと、事業の意義を理解してもらい、インド・ブータン側で本事業を実施したいという既成事実を作り、世銀経営層への説得に加勢してもらうのです。

もちろんこのアプローチには大きなリスクがあります。これだけ先方政府を動員したにもかかわらず支援が実現しなかった場合、世銀はインド・ブータン政府からの信頼を失いますし、協力してくれたインドの州政府の面子も丸潰れです。G氏もその点は十分承知していて、そのような致命的ダメージを避けるために、先方政府側で少し話を進めては、その成果を梃に世銀側の根回しを進め事業実現の確度を高め、その上でインド側の根回しを進めるというベビーステップ方式で、リスクの最小化に努めました。何かを成し遂げるためにはある程度のリスクを取ることは避けては通れません。ただ、そのリスクも扱い方次第では誰かにまとめて取らせるような博打を打たせるのではなく、許容可能なレベルまで分割・分散することでマネージできるのだということをG氏からは学びました。

先方政府側、世銀側、様々な組織や部署を巻き込むこの調整は複雑を極めましたが(G氏の言葉を借りると「3-dimensional puzzle」)、その甲斐あって本事業は実施の目途がつきました。「If you build it, he will come」とは映画フィールドオブドリームスの有名な一節ですが、信念を持って人事を尽くせば不可能をも可能にできるということをG氏はその背中で教えてくれました。そしてG氏は関係者間の駆け引きに長けているだけではなく、相手の立場・身分を問わず誰とでも分け隔てなく気さくに接し、ユーモアに溢れ誰からも愛される人格者で、彼といると不思議と自分の能力の100%以上を発揮できる、所謂「理想の上司」でした。そのG氏はこの年末で定年退職し、プロジェクトリーダーの立場は私が引き継ぐことになっています。彼の抜けた穴はあまりに大きすぎますが、彼から学んだ精神を実践しつつ、私なりのリーダーシップを模索していければと思っています。

私事ながらこの9月より勤務地をワシントンDCからダッカに変え、今の仕事に取り組むことになりました。現場から見えてくる国際協力の現在地を、また皆さんに届けられればと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【2】 開発フォーラム新着情報チェック
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌――┐Dev-Info 新着情報チェックでは掲載情報を
|\/│募集しています。情報掲載を希望する場合は、
└――┘こちら までご連絡ください。

┏━━━━━━━━━━━┓
– 日本関連 –
┗━━━━━━━━━━━┛

●外務省は、9月27、28日にグローバルフェスタJAPAN2025を新宿で開催予定です(記事)。

●日本は、パプアニューギニア独立国のとの間で、2件(「国立水産大学の施設及び訓練機材整備計画(供与額32.55億円)」、「人材育成奨学計画(供与額4.22億円)」)に関する書簡の交換が行われました(記事)。

●日本は、「キルギス共和国のとの間で、2件の無償資金協力(「経済社会開発計画」(医療コンテナ2台の供与)及び「人材育成奨学計画」)(合計8.99億円)に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。

●平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業の令和7年度「プライマリー・コース」日本人研修員の募集が開始されました(締切7月4日)(記事)。

●外務省国際機関人事センターは空席情報を更新しました(記事)。

●外務省は、各種分野の任期付き職員、非常勤職員を募集しています(記事)。

●開発に関する人材募集情報がPartnerページに掲載されています(記事)。

┏━━━━━━━━━━━┓
– バイ・ドナー関連 –
┗━━━━━━━━━━━┛

●英国は、アフリカとのパートナーシップのあり方について、アフリカの47カ国や国際期間を対象に5ヶ月間にわたるコンサルテーションを実施しました。その結果のサマリーが公開されています(記事)。

●英国は、女性、平和、安全保障に関する第5次国家行動計画(2023〜2027年)についての年次報告書を発表しました(記事)。

●AFDは、フランスのニースで開催された国連海洋会議の成果をHPで紹介しています(記事)。

●GIZは、2024年の統合報告書を発表しました(記事)。

●欧州連合(EU)とインドは、第三国における開発協力を推進することに合意しました。持続可能な開発のためのデジタル化などが優先分野に挙げられています(記事)。

●カナダ政府は、全国先住民の日である21日、南米、アフリカ、インド太平洋地域の先住民による気候変動への対応力を構築し、気候変動対策を支援する3つの新たな先住民主導のイニシアティブを支援するため、2年間で510万ドルの連邦資金を提供すると発表しました(記事)。

●豪州政府は、中国と共に第8回太平洋ハイレベル協議を開催し、気候変動への適応と回復力、安全保障、漁業・海洋問題、太平洋全域の経済開発など、地域の優先事項に関する様々な意見交換を行いました(記事)。
┏━━━━━━━━━━━┓
– 国際機関関連 –
┗━━━━━━━━━━━┛

●OECDは、OECD諸国の公共サービスについてまとめた” Government at a Glance 2025”を発表しました(記事)。

●世界銀行は、債務に関する報告書”Radical Debt Transparency”を発表しました。その中で、債務の透明性確保には抜本的改革が必要と論じています(記事)。

●世界銀行は、アセアン諸国の地域エネルギー統合促進支援を目的とした770万ドルのプロジェクトを承認しました(記事)。

●アジア開発銀行は、ミャンマーのコミュニティー持続発展支援を目的とした1億ドルの人道支援パッケージを承認しました(記事)。

●アフリカ開発銀行は、コートジボアールの国別フォーカスレポートを立ち上げました(記事)。

●米州開発銀行は、ブラジルの民間セクター投資環境整備のための1億ドルのプロジェクトを承認しました(記事)。

●国連は、紛争下における子供の権利の侵害が昨年は4万件を超え、一昨年比でも25%も増加したと報告しています(記事)。

●WHOは、国際医療分野の援助額が最大で昨年度比で40%程度減少する恐れがあるという推計結果を発表しました(記事)。

●UNFPAは、State of World Populationを出版し、金銭・将来への不安から家庭を持てない若者が増加していると報告しています(記事)。

●ユニセフとILOは、児童労働に関するレポートを発表し、約1億3800万人の子供が児童労働に従事していると報告しています(記事)。

●IOMは、ギャングの抗争が続くハイチで130万人が避難を余儀なくされていると報告しています(記事)。

●FAOとWFPは、南スーダンで770万人の大人と230万人の子供が食糧不足の危機に瀕していると報告しています(記事)。

●UNDPは、紛争下にあるコンゴDRCの支援のために2500万ドルのアピールを発表しました(記事)。

●国連は、既存の440億ドルのアピールに加えて、緊急度の高い290億ドルのアピールを発表しました(記事)。

●UNHCRは、資金難に直面しているため人件費の30%カットを強いられ、難民の支援に支障が出ていると報告しています(記事)。

●OHCHRは、文民の戦死が昨年比で40%ほど増加して、約5万人の文民が戦死したと報告しています(記事)。

●OCHAは、ガザ地区で人道支援を実施するための燃料が枯渇して危機的な状態にあると報告しています(記事)。

┏━━━━━━━━━━━┓
-シンクタンク・NGO・財団関連 –
┗━━━━━━━━━━━┛

●組織基盤の強化を応援する「Panasonic NPO/NGO サポートファンド for SDGs」の募集が7/15-7/31の日程で行われます(記事)。

●NGOスタディ・プログラム研修員追加募集が開始されました、締切は8月7日(記事)。

●多⽂化共⽣の担い⼿・ 実践者全国会議2025が7月28・29日に開催されます(記事)。

●国際協力推進セミナー「地域発の国際協力 ~持続可能な未来を共につくる~」が7月25日に開催されます(記事)、

●Oxfamは、G7は2026年の国際協力予算を2024年度比で約30%減らす見込みであるが、これを減らさないように訴えています(記事)。

●Oxfamは、開発のための資金会議に際して声明を発表しています(記事)。

●Oxfamは、G7サミットに際して声明を発表しています(記事)。

●Save the Childrenは、フィリピンで過去数年間の間に10代前半の少女の出産数が約60%増加していると警告しています(記事)。

●Save the Childrenは、途上国の貧困層の子供の約6割は保護者と遊んでもらえず、富裕層と比べても割合が倍近くになっていると報告しています(記事)。

●ODIは、ジェンダー平等と気候危機に関する報告書を発表しました(記事)。

●ODIは、適応ファイナンスに関する報告書を発表しました(記事)。

●英王立国際問題研究所(チャタムハウス)で行われた、エザコンワUNDP総裁補兼による講演の記録が公開されています(記事)。

●英サセックス大学の税と開発に関する国際センター(ICTD)は、関税の時代の開発をテーマにした報告書を発表しました(記事)。
●英サセックス大学IDSは、英国の歳出見直し(Spending Review)の発表を受けてコメントしています(記事)。

●「アフリカ大陸における食の未来」をテーマにロンドン大学LSEで行われた講演の記録が公開されています(記事)。
●世界経済フォーラムは、第16回ニュー・チャンピオン2025年次総会を開催しています(記事)。

●国際開発センターは、「壊滅的な援助削減の中、難民の受け入れを加速する」と題したブログを公表しました(記事)。

●アジア財団は、Googleからの資金提供を受け、Go Digital ASEANイニシアチブを立案・実施し、地域全体でデジタルスキルへの参加の拡大に貢献しています(記事)。

●ジェトロ・アジア経済研究所は、2023年10月~2024年9月の1年間に公刊された研究書(英文書籍は2024年)で、開発途上国・地域の経済、政治、社会などの諸問題を調査、分析した書籍29点の中から「アジア経済研究所発展途上国研究奨励賞」表彰作品として2点を決定しました(記事)。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ワシントンDC開発フォーラム「情報サービス(dev-info)」と
  「メーリングリスト(devforum)」
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ワシントンDC開発フォーラムでは、本フォーラムの開催する勉強会等のイベント関連情報 (案内・レジュメ・議事録)をはじめとする活動情報に加え、グローバルな途上国の開発関連情報と日本の取り組みに関する最新の情報を、「DC開発フォーラム 情報サービスメールマガジンDev-info」として、電子メールにて隔週で配信しています。
[バックナンバー]
2002年7月以降の全てのバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
[メール配信登録]
本情報サービスの配信をご希望の方は、こちらからご登録ください。
[記事掲載依頼]
本情報サービスへの記事掲載をご希望の方は、こちらまでご相談ください。
[登録解除]
本サービスの登録解除をご希望の方はこちらに空メールを送り解除いただきますようお願い致します。
[情報交換メーリングリスト]
本フォーラムでは、毎回のBBLについての意見交換の他、より広くグローバルな開発戦略と日本の関わりに関する 意見交換や情報交換を行うために、「ワシントンDC開発フォーラム・メーリングリスト(devforum)」を運営しています。参加をご希望の方は、こちらのフォームより参加申請を行ってください。
[DC開発フォーラム全般に関するお問い合わせ]
登録に際するエラーや、dev-infoやdevforumをはじめ、DC開発フォーラムの活動についてご質問・ご意見等ございましたら、お気軽にこちらまでご連絡いただけますと幸いです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集担当:小林隼人/荘所真理/畠山勝太/伊藤千春/石野瑠花/浅海誠/砂原遵平
発行:ワシントンDC開発フォーラム
DC開発フォーラムHP: http://www.devforum.jp/
Facebookページ: http://on.fb.me/rtR9Le
twitterアカウント: @DC_dev_forum
2025年5月31日発行