2025年7月8日発行
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ワシントンDC開発フォーラム・情報サービス
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皆様の同僚・知人への転送大歓迎いたします。
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【1】ワシントンDC開発フォーラム便り
「転期に立つ国際開発—日本は何を目指すべきか」大谷壮矢(世界銀行 日本理事室/ワシントンDC)
【2】ワシントンDC開発フォーラム新着情報チェック
トルコ共和国との間で、供与額38億円の無償資金協力「地震被災地域における復旧・復興計画」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)
AFDのリウー総裁は、第4回開発資金国際会議 (FfD4) の意義やAFDの役割についてインタビューで語っています(記事)
IOMは、イランからアフガニスタンに帰還した人数が今年だけで70万人を超えており支援できるだけのキャパシティを超えていると報告しています(記事)
英サセックス大学IDSの専門家は、FfD4が閉幕し、その後のステップについてコメントしています(記事)他
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【1】 ワシントンDC開発フォーラム便り
タイトル:転期に立つ国際開発—日本は何を目指すべきか
執筆:大谷壮矢(世界銀行 日本理事室/ワシントンDC)
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2025年1月に米国の新政権が発足して以来、国際援助やODAを取り巻く国際社会の雰囲気が大きく変化してきています。筆者が所属する世銀内部でも、こうした変化はあちこちで感じられ、わかりやすいところでは、世銀の課題認識や人事面などに少なからず影響が出始めています。そんな中、一時スタッフの間でまことしやかに囁かれていた噂に、「世銀本部が日本に移転するのではないか」というものがありました。
もちろん、これは根も葉もないゴシップの域を出ない話で、そもそも民族大移動に伴う膨大な手続きや、日本への入国ビザの問題などを考えれば、実現可能性は甚だ怪しいと言わざるを得ません。ただ、世銀協定上、最大出資国に本部を置くとされていること(※日本は米国に次ぐ第2位の出資国)や、スタッフの中にも「日本に住めたらいいな」という声が少なからず存在したこともあり、半ば希望的観測としてこの噂が広まったのでしょう。
結局、4月にベッセント米財務長官が世銀・IMFへの引き続きの関与を明言したことで、この噂は雲散霧消するわけですが、米国が様々な国際機関から手を引く構えを見せた時に、国際社会が次に振り返った先が日本だったという点は大変興味深い事実と思います。実際、前述の「本部移転説」は別にしても、様々な開発アジェンダにおいて、日本への注目度が高まっていることを強く感じます。
日本は伝統的に、国際協調主義や多国間主義に基づき、国連や世銀をはじめとする多国間枠組みを尊重する政策を取ってきており、それ自体は極めて日本らしいスタンスと言えますが、一方で、自国のプライオリティをねじ込むよりも和を重んじるあまり、「物言わぬ株主」になっているのではないかという批判も常にありました。
こうした経緯を踏まえると、現在日本が置かれている状況は、実に願ってもない好機のように思えてきます。米国の動きによって国際協調の「和」が揺らぎつつあるなか、国際開発コミュニティが揃って日本に視線を送っている。もちろん、単に資金を期待しているという現金な側面も否定できませんが、それ以上に、「米国が後退する今こそ、日本にリーダーシップを発揮してほしい」という期待感が込められているようにも感じられます。日本にとっては、和を尊重しつつも、自国にとって望ましい世界を形作る絶好の機会が訪れているのかもしれません。
このようなタイミングで重要なのは、「日本にとって望ましい世界」とは一体何なのかということですが、戦後の日本は、長らく「内政不干渉の原則」を盾に、こうした「あるべき論」を避けてきたきらいがあります。今、国際社会が日本に期待を寄せているこの瞬間だからこそ、日本人はあえてこの「あるべき論」と正面から向き合い、議論を深めていくべきではないでしょうか。
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【2】 開発フォーラム新着情報チェック
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┌――┐Dev-Info 新着情報チェックでは掲載情報を
|\/│募集しています。情報掲載を希望する場合は、
└――┘devinfo.mailmagazine@gmail.com までご連絡ください
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– 日本関連 –
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- ラオス人民民主共和国のとの間で、総額4億2,000万円を限度とする無償資金協力「人材育成奨学計画」に関する交換公文の署名が行われました(記事)。
- 世界食糧計画(WFP) イエメン事務所との間で、供与額3.00億円の無償資金協力「食糧援助(WFP連携)」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
- 国連開発計画スリランカ事務所との間で、供与額3.57億円の対スリランカ無償資金協力「腐敗防止制度の確立を通じた腐敗行為訴追推進計画(UNDP連携)」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
- トルコ共和国との間で、供与額38億円の無償資金協力「地震被災地域における復旧・復興計画」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
- 国際協力機構(JICA)は、バングラデシュ人民共和国政府との間で、「ジョイデプール-イシュルディ間鉄道複線化事業(第一期)」を対象として、円借款貸付契約に調印しました(記事)。
- JICAは、社会人採用(2026年1月~4月入構)の応募を受付中です(応募締切8月3日)(記事)。
- 外務省国際機関人事センターは空席情報を更新しました(記事)。
- 外務省は、各種分野の任期付き職員、非常勤職員を募集しています(記事)。
- 開発に関する人材募集情報がPartnerページに掲載されています(記事)。
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– バイ・ドナー関連 –
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- AFDのリウー総裁は、第4回開発資金国際会議(FfD4) の意義やAFDの役割についてインタビューで語っています(記事)。
- スペイン国際協力開発庁(AECID)、同国の開発金融機関コフィデス(COFIDES)および欧州連合(EU)は、サブサハラ・アフリカやラテンアメリカのオフグリッドやミニグリッドソリューションを支援するSOLプログラムに対し7500万ユーロの保証を提供します(記事)。
- EUと国際農業開発基金(IFAD)は、国際送金やディアスポラ投資を通じて農村部の気候変動に対するレジリアンスを高めることを目的とした、426万ユーロのイニシアチブを開始しました(記事)。
- カナダや英国など5カ国は、世界難民の日に際し、OSCE(欧州安全保障協力機構)に声明を発表しました(記事)。
- カナダ外務大臣は、第32回ASEAN地域フォーラム(ARF)に出席し、ミャンマー危機、東シナ海と南シナ海の緊張、北朝鮮とロシアの軍事協力、中東における不安の高まりなど、安全保障上の課題について討議します(記事)。
- 豪州政府は、中国との間で第8回太平洋ハイレベル協議を開催し、気候変動への適応と回復力、安全保障、警察、漁業・海洋問題、太平洋全域の経済開発など、地域の優先事項に関する様々な意見交換を行いました(記事)。
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– 国際機関関連 –
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- 国際通貨基金(IMF)は、同サイト上で、アフリカ地域の財政健全化に関するブログを公開しています(記事)。
- 世界銀行グループと国際原子力機関(IAEA)は、途上国における安全で、確実かつ責任ある原子力エネルギーの活用を支援するための協力に関する合意を締結しました(記事)。
- 世界銀行は、紛争、脆弱国家の状況について論じたレポート”Fragile and Fragile and Conflict-Affected Situations: Intertwined Crises, Multiple Vulnerabilities”を発表しました(記事)。
- アジア開発銀行は、フランス開発庁(AFD)との間で新たなパートナーシップ枠組みに調印しました(記事)。
- 米州開発銀行は、パラグアイの農業セクター向上、社会、経済発展支援を目的とした、7500万ドルのプロジェクトを承認しました(記事)。
- アフリカ開発銀行は、南アフリカのグリーンスキル向上のための100万ドルの支援を実施します(記事)。
- 欧州投資銀行とモーリタニアのエル・アマナ銀行は、モーリタニアの中小企業(SMEs)への融資を目的とした2,000万ユーロの契約に調印しました(記事)。
- 国連は、地震に見舞われたミャンマーで軍事行動により国際支援が進まないだけでなく、震災復興に必要な資金の37%しか集まっていないと報告しています(記事)。
- 国連は、債務危機の状況と取るべき対処策を論じた報告書を出版しました(記事)。
- IOMは、イランからアフガニスタンに帰還した人数が今年だけで70万人を超えており支援できるだけのキャパシティを超えていると報告しています(記事)。
- OHCHRは、ウクライナで昨年の同時期と比べて文民の死者数が40%近くも増加していると報告しています(記事)。
- WFPは、イエメン南部のいくつかの地域で人口の半数が深刻な食糧不足に陥っていると報告しています(記事)。
- 国連総会は、2025-26のPKO予算として54億ドルを認可しました(記事)。
- ユニセフは、中東北アフリカ地域で1億人を超える子供達が紛争の影響に晒されているが、支援に必要な額の7割以上が不足していると報告しています(記事)。
- 国連安保理で、コンゴDRCで700万人以上が避難を余儀なくされているものの、支援に必要な資金の1割しか集まっていないと報告されました(記事)。
- UN Womenは、ジェンダー平等を実現するためには毎年4200億ドルの資金不足を解消する必要があると報告しています(記事)。
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– シンクタンク・NGO関連 –
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- 英ODIは、今後の援助の潮流について分析した報告書を発表しました(記事)。
- ODIは、ジェンダー平等の観点からの援助プロセスのデューデリジェンスについての報告書を発表しました(記事)。
- 英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の専門家は、7月9日に米トランプ大統領が開催するアフリカ5カ国首脳会議についてコメントしています(記事)。
- 英サセックス大学IDSの専門家は、FfD4が閉幕し、その後のステップについてコメントしています(記事)。
- 英サセックス大学IDSの専門家は、重要鉱物の採掘の軍事的側面が開発と持続可能性に与える影響について解説しています(記事)。
- 国際開発センター(GCD)はタイド型開発援助を行うEUによる経済発展を損なうリスクについての記事を公表しています(記事)。
- アジア太平洋地域におけるデジタル・セキュリティ・ニーズに応えるため、Google社はアジア財団に対し、大学を拠点とするサイバーセキュリティ・クリニックを11カ国で拡大するために新たに500万ドルの資金援助を行うことを発表しました(記事)。
- 世界経済フォーラムは、サマーダボス2025のハイライトに関するビデオを公開しています(記事)。
- JETROアジア経済研究所は、第8期(2025年度)開発スクール(イデアス)研修生の追加募集を行っています(記事)。
- JANIC学生アイデアコンテスト2025のエントリー受付が開始されました、締切は8月31日(記事)。
- グローバルフェスタJAPAN2025が9月27・28日に開催されます(記事)。
- Oxfamは、開発のための金融会議の開催に際して声明を発表しています(記事)。
- Oxfamは、世界の経済格差を分析した報告書を出版しました(記事)。
- 130を超えるNGOはイスラエルに対してガザ地区での食糧配布所での銃撃を止めるよう呼びかけています(記事)。
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2025年7月8日発行