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2010年6月21日
第105回 DAC対日援助審査,開発のための政策一貫性

6月16日,DACによる対日援助審査の報告書が公表されました(注1)。援助審査はDACの主要活動の1つであり,その目的はDACメンバーの援助政策や実施を確認・評価して,相互学習により成果(aid performance)を向上することなどです。今回の援助審査は,日本にとっては2003年以来の審査です。ドイツとデンマークが審査国となって実施されました。その内容の全てはご紹介できないので(OECDや外務省のHPをご覧下さい),ここでは21の勧告のうちの3つで取り上げられている「開発のための政策一貫性」を取り上げたいと思います。

開発のための政策一貫性(PCD:Policy Coherence for Development)とは,ドナー国の援助政策以外の政策が(例えば貿易,移民や農業政策など),援助政策の目的達成を補完している,または負の影響を与えないように調整されているなどです(注2)。これは1990年代から議論されてきており,OECDでは2002年の閣僚宣言においても触れられています(注3)。具体的な例としては,スウェーデン政府の法案が分かりやすいかと思います(注4)。例えば,同法案の冒頭には,開発の目的は貿易,農業,環境,安全保障,移民等の全ての政策分野に当てはまると書いてあり,教育分野の箇所を見ると,他国との文化交流やスウェーデンにおける外国人教育の拡大等が記載されています。これらの政策の進捗は外務省が議会に報告するそうです。

さて,日本への勧告を改めて見ると,このPCDについては,関連する政策文書を改訂し,これを活用して広く一般の間でPCDに対する認識を高め,そしてモニタリングや分析等を強化する旨の記載があります。確かにスウェーデンのように全ての政策を開発の目的に貢献するように調整するためには,多くの方々の支持がないと実現はなかなか難しいかと思います。一方,日本は特に東アジアにおいて,貿易や投資と一体となった援助政策を展開して東アジアの発展に貢献したとも言われます。日本も特定分野においては知見等があるのかもしれません。

なお,このPCDですが,OECDにおいてはDACの援助審査だけではなく,2008年には閣僚レベルの宣言が採択されています(注5)。また2010年には,PCDを促進する組織面について,OECD加盟国に対しての理事会勧告が採択されています(注6)。PCDは昔から存在する課題のようですが,なかなか実現が難しいためか(またはOECD/DACが議論に好都合な場所なのか),DACにおいては現在でも頻繁に議論される課題です。

PS/最近では日本以外にも対ベルギー援助審査が実施されており,報告書が出されています。これらは各国の援助制度等を把握するには大変便利な資料です。なお,対英援助審査の報告書は,政権交代等の影響で公表が遅れていますが,近日中には公表されるようです。

(パリDAC通信担当:上野 修平)

注1:OECDのHP(http://www.oecd.org/dac/peerreviews/japan)。外務省のHP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/dac.html)。
注2:PCDには,ドナー国の政策間の一貫性以外にも,ドナー国と途上国間の政策の一貫性などの側面もあるようです(http://www.oecd.org/dataoecd/24/58/39327642.pdf)。
注3:経緯等については,(旧)JBIC開発金融研究所の報告書が詳しく,お勧めです(http://www.jica.go.jp/jica-ri/research/archives/jbic/pcd.html)。
注4:http://www.regeringen.se/content/1/c6/02/45/20/c4527821.pdf。他の具体例を探す場合には,http://www.oecd.org/dataoecd/14/53/44704030.pdf
注5:http://www.oecd.org/document/16/0,3343,en_2649_18532957_45238928_1_1_1_1,00.html。
注6:http://webnet.oecd.org/oecdacts/Instruments/ListBySubjectView.aspxから,開発援助の項目をクリック。

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