第11回(2012/3/23)インドのスラム政策


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ワシントンDC開発フォーラムでは3月23日(金)に、第11回ワークショップを世界銀行の会議室で開催し、約25名が参加しました。今回は、ミシガン大学都市計画部博士課程に在籍し、日本政府・世界銀行共同大学院奨学生でもある、中村昌平さんをスピーカーとして迎えました。
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現在、東アジア・南アジア・アフリカで都市人口が増加しており、2050年には都市人口が農村人口を上回ると予想されています。スラムは安価な住宅の供給不足と貧困によって発生しますが、その背景には不平等・経済成長の欠如・移民の流入その他様々な問題が潜んでいます。特に、多くの都市で機能不全に陥っている都市計画をいかに修正するかが鍵となります。
インドでは中央政府が Rajiv Awas Yojana (RAY)というスラム政策スキームのもとで州政府・地方自治体を後押しし、現在あるスラムに対処する(移転・改善・再開発等)、将来新たなスラムが発生する事を防ぐ(利用可能な住宅ローンの提供、都市計画規制の修正等)、ガバナンスの改善(地方分権化・データベースの整備等)、という3方向からスラム問題への対処が行われています。
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その主要な柱の一つであるスラム再開発事業は、ムンバイで1990年代より先駆的に実施されているスラム・リハビリテーション・スキームをモデルとしています。この事業では、スラム住民、ムンバイ州政府、民間開発デベロッパーの3者の協力の下、スラム住居の建て替えが進められています。今回のワークショップでは、現在のスラムへの対処法のうちのスラム再開発の手法について詳しく説明して頂きました。州政府はスラム住民に無料で家を提供する事で票を得て、民間開発デベロッパーはスラム住民のために住宅を提供する代わりに政府から市場で取引する事もできる容積率ボーナス(開発権利移転:TDR)を受け取り、スラム住民は住民の7割以上の合意を得る事で開発事業者に住居を建設してもらう事が可能になります。
このスラム再開発事業が抱える課題としては、住民主導であるはずのものがトップダウンで行われてしまっている、住宅市場や開発権利移転市場の影響を受けるため再開発の進展具合が不安定になる、問題を含んだ都市計画規制をそのままに官民共同を進めたためにいびつな都市構造が出来上がりインフラ不足を誘発している、コミュニティ機能の崩壊、等が挙げられます。しかし、実際に47万人のスラム住民がこの再開発の恩恵を受けている事実は見過ごされるべきではありません。
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質疑応答では、スラム間での経済活動、容積率の開発権利移転の歴史、容積率の決定要因、移転したスラム住民への仕事や教育と言ったソフト面のサポート、土地の所有権問題、都市開発分野における他分野の専門化との協調、ムンバイの事例の適用可能性、等について議論が交わされました。ワークショップ終了後には会場で懇親会を開催しました。懇親会には約20名が参加し、活発な意見交換や議論が交わされました。また、今回のワークショップはUstream配信を行い、30名の方に視聴して頂きました。
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