第223回DC開発フォーラムBBL「アフリカ理数科教育の現状と課題-ケニアSMASSEプロジェクトの現場から」


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第222回BBLの議事録が出来ましたので、以下をご覧下さい。配布資料等もこちらのHPからご覧になれます→ http://www.devforum.jp/bbl/


第223回DC開発フォーラムBBL 2012年3月29日
「アフリカ理数科教育の現状と課題-ケニアSMASSEプロジェクトの現場から」
プレゼンテーター
田口晋平
(元数学教育専門家/スタンフォード大学大学院)
SMASEプロジェクトのコンセプト
•フェーズ2まではStrengthening Mathematics And Science at Secondary Education (SMASSE)であったが、フェーズ3から初等教育にも拡大し、プロジェクト名からSecondaryが抜け落ち、現在のSMASEとなった
•プロジェクト開始前の事前調査では、教師の一方的な説明による授業形態、受動的な生徒の学習姿勢、教員の教科に関する知識不足、指導法などに関する教師間の交流不足、視学官の指導力不足といった問題が見つかった
•SMASEは授業改善運動を目標としている。目標とする授業は生徒が能動的に学習し、科学的・論理的思考を養う授業(ASEI/PDSIの実践)である。そのような授業にしていくために、指導案の準備を促進し、身近な材料を使用した実験や学習の導入を促進した
•ASEIとは、Activity(生徒の活動を重視した授業)、Student centered(生徒に考えさせる授業)、Experience(実践・実験を取り入れた授業)、Improvisation(身近に調達できる素材を工夫して活用する授業)、の4つの要素が取り入れられた授業の事を指す
•PDSIとは、Plan(授業案の作成)→Do(授業の実施)→See(授業の観察)→Improve(授業の改善)という、授業改善のプロセスの事を指す
•SMASEプロジェクトの上位目標は生徒の理数科における学力の向上であり、そのために教員に研修を施し、授業の質を向上させるという介入方法を取っている
プロジェクトフェーズ1、2
•フェーズ1では1998年7月から5年間かけて8県でパイロット事業が行われた。これまで現職研修が存在していなかった所に、現職研修を生み出した
•フェーズ2は2003年から5年半実施された。フェーズ1の成果をケニア全土で展開すると共に、他国への広域支援も開始された
•フェーズ1・2の成果としては、カスケード型研修の第一段階を担当するプロジェクト専従の研修講師55人および、第二段階となる地方研修講師1200名が養成されたこと、そして、最終的に1.5万人の理数科教員に対し研修が行われた点が挙げられる
•組織面での成果は、前述の第一段階を行うアフリカ理数科教育センターの設立、そして第二段階を行う地方拠点校106校を選定および整備が挙げられる
•制度面の成果は、第一段階となる中央での研修予算が教育省の通常予算の中に確保された点が挙げられる。さらに、第二段階となる地方では授業料の一部を教員研修費として積み立てたSMASE基金が設立された点も挙げられる
プロジェクトフェーズ3
•2009年1月からの5年間のプロジェクト。プロジェクトの目的は、初等教育における研修制度の構築(全国)、および、中等教育における校長の研修である(中等教育の教員に対しては、フェーズ1,2で構築した研修制度をケニア側が独自に継続して行うことが期待されている)
•初等教育の理数科教員研修では、中等教育よりもはるかに多い約6万人が対象となる。そのため、中等教育では2段階のカスケード方式で実施したが、初等教育では3段階のカスケード方式(3段目はクラスター研修)で実施している
•現在ではSMASE型のプロジェクトは14カ国に展開されており、ケニアが他のアフリカ諸国の理数科教員に対し研修を行うなど南南協力事業の一つのモデルケースとなっている。さらに、33カ国と1つの地域からなるSMASEネットワークが組織され、年一回の会合が行われている
SMASEの課題
•各ドナーがそれぞれ現職研修を提供しているが、これらを整理し、制度・政策化しようと考える教育省をいかに支援できるか
•そして、作り上げた現職教員研修システムに対し、いかにして教育省の政策サポートを受けられるか考えなければならない
•つまり、より包括的な研修システムの整備に向けて教育省を支援する必要があり、理数科以外の教員を対象とした研修や、研修の頻度、教員の待遇との連動、研修参加のためのインセンティブなどと併せて議論する必要がある
•実際に研修を実施する上での課題としては、地方研修を行う中核人材の質確保、研修教材の現地リソースによる作成、正確な教育統計の把握、モニタリングの仕組みといった課題がある
関連ウェブサイト
http://www.jica.go.jp/activities/issues/education/SMASE-WECSA/index.html
質疑応答
Q. 他のドナーと比較して、日本の教育協力の特徴はどのような点にあるか?
A. SMASEのように、現場で直ぐに使えるような協力を行っている事が特徴の1つとして挙げられる。さらに、きめ細かいフォローアップや持続可能な支援を行っている事も特徴
Q. SMASEでは、学校運営の改善に貢献するような支援も行われているか?
A. 校長先生に対して、現職研修への理解を得られるような研修を行っているが、現状では学校運営の改善までは行っていない。JICAでは、”みんなの学校プロジェクト”を通し学校運営について取り組んでいる
Q. 教員給与にはアウトカムを評価するタイプと職能を評価するタイプがあるが、ケニアではどちらの方に議論が向かっているか?
A. 現状ではアウトカムを評価する方向には向かっていない。教員の質を図る指標として、学年末に行われる全国統一テストの結果は重要視されているが、これを教員の待遇につなげる動きは今の所出てきていない。現状では、SMASEの研修を受けないと昇進のための面接を受けられない事にはなっている。
Q. SMASEは教員養成とどのような連携を図っているか?
A. SMASEは教員養成のコンテンツを深める形で行われている。適切な現職研修が行われないと、養成過程で培った事が失われてしまうため、その点が留意されている
Q. 教育予算の確保が厳しい中で、どうやってSMASEを持続可能なものにしていくのか?
A. 教育システムの中で、現職研修の優先順位がどのようなものか考えていく必要がある
Q. SMASEでは、学校の電化等のインセンティブ付けで農村部に教員を招聘するような事も行われているのか?
A. SMASEは、現職研修で得た事が直ぐに教室で使えることをインセンティブとしている。外発的な動機付けは行っていない
Q. ケニアでは教育セクターでのICTの活用は進んでいるか?
A. 教育省はICT導入に非常に熱心であるが、農村部に行くとまだPCを活用できる状況にはなく、ICTの活用を進めるのはまだ難しいと考えられる
Q. SMASEのアウトカムは見られたのか?
A. プロジェクトが行った調査では、研修を受けた教員に教わった生徒の学力に関し、統計的に有為な差が見られた。しかし、これがコストに見合うかどうかの費用対効果分析はまだ実施されていない
Q. SMASEのexit strategyはどのようなものか?
A. 現時点では判断が難しい
Q. SMASEはどの程度の生徒に効果を及ぼしているか?
A. SMASEが対象としている教員は、すべての中等理数科教員、および、6年から8年を教えているすべての初等理数科教員であることから、理論上は初等1年から5年を除くすべての生徒が裨益する事になる。しかし、実際には研修にやってこない教員もいると考えられる
Q. SMASEはなぜケニアで行われ、なぜ理数科に焦点を当てたのか?
A. 相手国から要請が有ったというのが一番の理由。さらに、ケニアは工業化に力を入れており理数科教育を重視していたことも理由の1つである
Q. カスケード制度を用いた現職研修システムが上手く機能した理由はどこにあるか?
A. 一方的な講義形式ではなく、双方向的な勉強会形式で行った事が機能した理由の1つであると考えられる。また、中等教育では、3段階のカスケード方式は上手く機能しなかったので、2段階のカスケード方式に切り替えた

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