第14回DC開発フォーラムワークショップ「ブータン:国民総幸福(GNH)という開発」

第14回DC開発フォーラム ワークショップ「ブータン:国民総幸福(GNH)という開発」
プレゼンター:高橋孝郎(たかはしたかお)IFC(国際金融公社)アソシエイト・インベストメント・オフィサー
<高橋さんのブータン・ブログ/Twitterアカウント>
「Appreciate Happiness ブータン・ブログ ブータン首相フェローとは? What is Bhutan Prime Minister’s Fellow?」 http://thanks2happiness.blog.fc2.com/blog-entry-28.html
@ taktaktictac https://twitter.com/taktaktictac
【ブータンの背景知識】
・ブータンはチベット仏教が国教→宗教が幸せを求める動きに直結している面は大きい
・中国・インドと、経済的影響力の強い国に囲まれている→これらの国を相手にしながらどう生き残るのかもGNHの課題
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【ブータンと幸せの追求】
・ブータンは「世界一幸せな国」か?
確かに調査では「97%が幸せ」と回答されている
そこでフォーラム会場聴衆に「あなたは幸せか?」という質問(選択肢は1.とても幸せ 2.幸せ 3.幸せじゃない)
→会場内の人間のおおよそ95%は幸せ(選択肢1OR2)と回答
→大体の人が幸せなのはブータンに限ったことではない。数字だけが一人歩きしている印象は否めない
・GNH もともとはスローガンのようなものだったが、政策目標・国づくりの目標として経済(GDP)ではなく「国民の幸せ」を基準に
・GNHC(GNH委員会)が発足し、政策立案の意思決定プロセスにGNHのコンセプトを大きく取り入れる。具体的方法は、政策立案時にGNHスクリーニング(ストレスへの影響など)を行い、4段階評価で平均値3に満たない場合は政策の変更を求める、など
→具体的な結果例:WTO加盟を見送りなど
・GNHインデックスとは
幸せの基準を9分野に分け調査
9分野中5分野はHDI(人間開発指数)など、一般的な開発の基準と重複する
ブータン特有の分野は
心の豊かさ
時間の使い方
共同体の活力
文化の多様性(ブータンは山一つこえると言葉が違う、というほど文化が多様)
・新たな幸福の基準を設定し再調査したところ、幸せと定義された国民は41%だった
→メディアは結果だけ見て「ブータンの幸福度が急低下した」と書いた。これは事実か?
→事実は異なる。ブータンは意図的に幸福の基準を厳しくして、より具体的な幸福政策の実施を目指した。結果幸せのカテゴリに入ると見なされる人数が減少しただけ
【幸せなブータン人、不幸せなブータン人】
・ブータンで一番幸せなのは「公務員」 なぜか?
→ブータンは産業が全然ないので、公務員は安定している+福利厚生もよい
なお最下位から二番目は「農家」
「農家」よりも「失業者」の方が幸せと…なぜ失業者がそこそこ幸せなのか?
→失業の原因は地方から都市への若者の流入→ 急速に普及したTVなどを通して入ってくる情報により、都市部の華やかさに惹かれて若者は街に出てくる→仕事がなくても、頼れる親戚がいてぬるい生活を送ることが可能なので少なくとも地方・農家の厳しい暮らしよりは幸福度が高い
・なぜブータンの農家が不幸せなのか?
ブータンの農業の一番の問題はイノシシ、象などの「野生動物」の存在
農作物を荒らす動物対策として、夜中ずっと見張りをする→労働時間の増加(ただ生産量そのものが増加するわけではないので実質賃金は低い)
・誤解している人も多いが、ブータン人にもストレスはある
GNHインデックスのための調査において「仏教国なのにブータン人の9割は瞑想しない」という結果がでてきた→政府はショックを受ける→政府主導で「瞑想は心や体の健康によいことを科学的根拠に基づき主張」→学校で瞑想の時間を導入
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【ブータンへの援助と自立】
ブータンは予算の40%を海外からの援助に頼っている
→持続可能でないのは政府も充分承知。自立をはかるために水力発電の建設を急いでいる。ただし水力発電は雇用を生まないので、他の産業育成も急務
→また、高橋さん個人の主張として民主主義における国民の自立も必要。なぜか?
→ブータン国民にテレビ番組が「GNHが機能しているか?」という質問をしたところ、Noと答える回答がYesを上回った
→カリスマ的な国王が率いた君主制の名残から、ブータン国民は「幸せは政府がもたらされるという勘違いが若干あるのでは?」という懸念が生まれる
幸せは最終的には個人個人が努力して得られるものなので、国民の意識も変わらないといけない
なお、プレゼン後の質疑応答では
「GNHを基に施行された政策のフィードバック方法」
「GNH研究の他国・他組織への応用方法」
などについて議論されました。
その後ネットワーキングセッションを設け、約1時間の自由歓談が行なわれました。
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会場参加者は約40人、Ustream閲覧者は約60人でした。ご来場、閲覧して下さった皆様、誠にありがとうございました。今後もよろしくお願い致します。