【dev-info】2024年4月3日号(日本、 フィリピンとの間で、総額2,500億円を限度とする円借款2件に関する書簡の署名・

2024年4月3日発行 http://www.devforum.jp/

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ワシントンDC開発フォーラム・情報サービス dev-info

皆様の同僚・知人への転送大歓迎いたします。

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【1】 ワシントンDC開発フォーラム便り

「共感革命 – ポッドキャスト/山極先生の著書から考えるこれからの開発のあり方とは?」(川俣 大和 / Wood Mackenzie / 東京 )

 

【2】ワシントンDC開発フォーラム新着情報チェック

  • フィリピンとの間で、総額2,500億円を限度とする円借款2件(「ダルトンパス東代替道路建設計画(第一期)(供与限度額:1,000億円)」、「マニラ首都圏地下鉄計画(フェーズ1)(第三期)(供与限度額:1,500億円))」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
  • 欧州連合(EU)は、医療への公平なアクセスの実現に向け、アフリカ医薬品庁への支援を強化します(記事)。
  • WHOは、イエメンの紛争が10年目に突入し、依然として1800万人弱が医療支援を必要としていると報告しています(記事)。 。他

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【1】 ワシントンDC開発フォーラム便り

「共感革命 – ポッドキャスト/山極先生の著書から考えるこれからの開発のあり方とは?」

(川俣 大和 / Wood Mackenzie / 東京 )

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ワシントンDCへの留学以来、移動中や家事などのながら作業中にポッドキャストを聞くことが習慣化しています。そんな中で最近聞いた早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生の番組で「グローバルノマドが人類を救う」といったテーマの回があり、近頃考えていたこととシンクロしたこともあり、ここで取り上げたいと思います。

一連のトークの中で入山先生は、京大元総長でゴリラ研究で有名な山極壽一先生の「共感革命」という本を紹介しています。同書では、人間は共感性の生き物であり、人間のコミュニケーションは五感で行われるべきものとしています。確かに、現在コミュニケーションはオンラインでの会議など、視覚と聴覚に偏重されている状況にあるといえますが、もともと人類は音楽がコミュニケーションの重要な部分を占め、共感をしながらコミュニティが形成・発展していったとしています。「サピエンス全史」のユヴァル・ノア・ハラリは、ホモ・サピエンスが言葉を獲得し、意思伝達能力が向上したことを「認知革命」と呼びましたが、山極先生は認知革命の前に「共感革命」があったという仮説をもとに議論を展開しておりとても興味深いです。山極先生の言葉を引用すると、「共感能力と認知能力は違う。共感能力とは、相手の気持ちを感じること、認知能力は相手の考えや意図を知ることだ。本来はそれぞれ違う能力であって、人間はこの二つをそれぞれ発達させて合体し、コンパッションという相手を思うやる気持ちと行為を生み出した。相手のシチュエーションが自分とは違うことを認識し、自分がどう振舞ったら相手に役立つかを想像できるようになったのだ。」まさに開発に関心のある方、身を置いている方にとって共感する部分も多いのではないでしょうか。

もう一つのポイントは人類の歴史は移動の歴史であるということです。そして、定住ではなく移動を繰り返しながらの生活は、五感を駆使したコミュニケーションがベースとなり共感力がより重要となります。人はアウストラロピテクスが生まれて700万年、そのうち約699万年は移動しており、人類はもともとノマドワーカーであったと。約1万年前に農耕が始まり定住し始め、また二足歩行するようになると、手が使えるようになり脳が発展し、やがて言葉が発達し概念が発生した。概念により物事を区別するようになった一方で、この概念は負の部分も大きく、物事の区別が例えば国と国との区別にもつながった。国という概念がなければ戦争は起きにくく、貧富の差も同様に概念の結果生まれてきた側面があるといえるのです。人類は、定住していなかった699万年の概念がない生活のほうが平和で安全であったのです。ここで改めて山極先生の言葉を引用します。「今起こっている戦争は、共感力の暴発である。(中略)共感力は小規模な社会でしか通用しない。それが集団の外や大規模な社会では違う目的で使われてしまうことを肝に銘じないと、うまく使いこなせないのだ。(中略)人間が持つ、動く自由、集まる自由、対話する自由という三つの自由をうまく使いながら小規模な集団をつなげていけばいい。個人が複数の集団を渡り歩きながら、その個人が媒介となって対立する集団間をつないでいく。集団間で人が動いていけば、文化をつなぐことができる。(中略)動かないことは、これまで人類に災禍をもたらしてきた。(中略)人間が暴力や戦争を起こす大きな理由は、定住と所有という問題から始まっている。その前は狩猟採集社会で、なんでも分け合い、土地を共有して暮らし、所有も定住もなかった。これからは、所有と定住を手放すことが重要だろう。」

これは我々の社会、そして個人としての生き方、キャリアの築き方にとっても多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

最後に、国際開発の本質とも通ずると感じた同書の一節を引用して締めくくりたいと思います。

「人類がかつて、ジャングルを出て草原に向かって歩き出したように、今、この地球で資源や技術を賢く利用しながら、生きやすいように社会を作っていきたいという若い世代が増えているのは大きな大きな希望だ。私はメタバースやChatGPT、また宇宙移住する話より、そうした若者たちの行動力に人類の新たな夢を見出してきたいと思う。」

 

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【2】 開発フォーラム新着情報チェック

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┌――┐Dev-Info 新着情報チェックでは掲載情報を

|\/│募集しています。情報掲載を希望する場合は、

└――┘こちら までご連絡ください。

 

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– 日本関連 –

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  • インドとの間で、総額1,618億7,500万円を限度とする円借款2件(「ムンバイメトロ三号線建設計画(第四期)(供与限度額589億4,300万円)」、「デリー高速輸送システム建設計画(フェーズ4)(第二期)(供与限度額1,029億3,200万円)」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。

 

  • ホンジュラス共和国との間で、117.03億円を限度とする円借款「病院ネットワーク強化計画」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。

 

  • フィリピンとの間で、総額2,500億円を限度とする円借款2件(「ダルトンパス東代替道路建設計画(第一期)(供与限度額:1,000億円)」、「マニラ首都圏地下鉄計画(フェーズ1)(第三期)(供与限度額:1,500億円))」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。

 

  • 国際協力機構(JICA)は、ペルー共和国のBanco BBVA Peru, S.A.との間で、国際基準を満たすグリーンビルディングや省エネ施設・設備の導入を支援するグリーンファイナンスの普及を図るため、150百万米ドルを上限とする融資契約に調印しました。本事業は国際金融公社(IFC)との協調融資として実施します(記事)。

 

  • JICAは、コートジボワール共和国との間で「アビジャン港穀物バース建設事業(第二期)」を対象として24億5,500万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました(記事)。

 

  • JICAでは、新卒採用(2025年4月入構)の応募を受付ています(記事)。

 

  • 外務省は、各種分野の任期付き職員、非常勤職員を募集しています(記事)。

 

  • 開発に関する人材募集情報がPartnerページに掲載されています(記事)。

 

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– バイ・ドナー関連 –

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  • 英国会計検査院(NAO)は、2020年の外務・英連邦省(FCO)と国際開発省(DFID)の統合により、英国の開発協力関連の能力が減少したと報告しました(記事記事)。
  • 英国は、UNICEFを通じた支援など、スーダンに向けた追加支援を行います(記事)。

    ●欧州連合(EU)は、医療への公平なアクセスの実現に向け、アフリカ医薬品庁への支援を強化します(記事)。

 

  • 米国は、大手食品小売業者とアフリカの生産者を結ぶ、プロスパー・アフリカの貿易プラットフォームであるアフリカ・トレード・デスクの立ち上げを発表しました(記事)。

 

  • ミレニアム・チャレンジ・コーポレーション(MCC)は、四半期ごとに開催される理事会で、MCCの設立20周年と今後のビジョンについてや、近年のニジェール・コンパクトの停止などについて議論しました(記事)。

 

  • 豪州政府は、結核に対するより効果的な治療法を開発し、それを必要とする人々に確実に届けるため、グローバル結核アライアンス(TB Alliance)に1,700万ドルを投資し、結核撲滅に向けた支援を行っています(記事)。

 

  • カナダ政府は、ベトナムにおける環太平洋パートナーシップ包括的および先進的協定(CPTPP)の実施5周年を受け、この協定の結果、2国間の貿易は増加し、ベトナムにおけるカナダ企業への門戸が開かれたと述べました。また、同政府は、カナダからベトナムへの輸出を増やすため、CPTPP関連の税関要件について学ぶよう、貿易使節団を激励しつつ、ASEAN・カナダ自由貿易協定(FTA)交渉の進展などを通じて、ベトナムとの商業関係を強化するカナダのコミットメントについても言及しました(記事)。

 

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– 国際機関関連 –

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  • 国際通貨基金(IMF)は、最新の研究”Rise of Digital Money: Implications for Pacific Island Countries”の中で、 ステーブルコインといった太平洋島嶼国地域におけるデジタル通貨や中央銀行デジタル通貨の潜在的な役割について論じています(記事)。

 

  • 世界銀行は、ヨーロッパ、中央アジア地域の再生可能エネルギーイニシアティブを立ち上げました(記事)。

 

  • 世界銀行は、レバノンの幼児ケアに関するレポート”Comprehensive Assessment of the Childcare Landscape in Lebanon”を発表しました(記事)。

 

  • アフリカ開発銀行は、米国政府とアフリカ開発支援の戦略パートナーシップを強化していくことで合意しました(記事)。

 

  • アフリカ開発銀行とIOM(国際移住機関)は、共同でアフリカの開発に関わる移民に関するレポート” Diaspora Engagement, Climate-Induced Migration and Skills Mobility: A Focus on Africa”を発表しました(記事)。

 

  • UNHCRなどは、五か国に散らばる南スーダン難民を支援するための14億ドルの計画を発表しました(記事)。

 

  • OCHAは、ソマリアでコレラが蔓延していると報告しています(記事)。

 

  • UNEPは、Food Waste Index Report 2024を発表し、8億人弱が飢えているものの世界の食料の約1/5は廃棄されていると報告しています(記事)。

 

  • WHOは、イエメンの紛争が10年目に突入し、依然として1800万人弱が医療支援を必要としていると報告しています(記事)。

 

  • OCHAは、イスラエルはガザ北部を支援する国連ミッションのうち半数以下にしか許可を与えていないと報告しています(記事)。

 

  • WHOは、結核対策に1ドルを投じるとその効果は39ドルにもなると分析した報告書を出版しました(記事)。

 

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– シンクタンク・NGO関連 –

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  • 英ODIは、多国間開発銀行が請求払い資本(callable capital)を必要とする可能性についての報告書を発表しました(記事)。
  • 英王立国際問題研究所(チャタムハウス)は、貿易と水リスクについての報告書を発表しました(記事)。

 

  • Oxfamは、食糧・農業の大企業のうち、水の無駄を減らそうとしている所は1/4にも満たないと報告しています(記事)。

 

  • Save the Childrenは、ギャングが跋扈するハイチで人口の約20%が飢餓の危機に瀕していると報告しています(記事)。

 

  • Save the Childrenは、コンゴ民主共和国のキブ地方北部で紛争が激化し540もの学校が閉鎖されていると報告しています(記事)。

 

  • Save the Childrenは、西アフリカの中央サヘル地域で紛争の激化により避難を余儀なくされた子供の人数が180万人にもなっていると報告しています(記事)。

 

  • アジア財団はASEANにおける女性の平和活動を強化する新たな地域イニシアティブを発表しました(記事)。

 

  • Centre for Global Developmentは英国国際開発委員会に参加し、食糧不安や飢饉から気候変動に至るまで、国際開発の最大の課題に対する「オルタナティブ・ファイナンス」について議論を行いました(記事)。

 

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2024年4月3日発行