キャリアセミナー2015レポート

ワシントンDC開発フォーラム キャリアセミナー2015レポート

ワシントンDC開発フォーラムでは、3月27日(金)にキャリアセミナーを開催しました。パネリストとして下記5名の方々をお迎えし、国際協力機構 (JICA) アメリカ合衆国事務所次長の上石博人氏に、モデレータとして進行していただきました。本セミナーには約60名の学生・社会人の皆様が集まりました。また、昨年同様に実施したWeb配信には、アメリカ、日本、イギリス、タイ、イラクなど世界各地から33人が視聴しました。

<パネリスト一覧>

土居陽子氏   世界銀行 金融・市場グローバル・プラクティス 上級金融セクター専門官
松田康彦氏   世界銀行 社会的保護・労働グローバル・プラクティス 上級公共セクター専門官
宮島智美氏   世界銀行 教育グローバル・プラクティス 教育専門官
柳本恵伸氏   国際金融公社 (IFC) グローバル・アグリビジネス事業部  シニア・インベストメント・オフィサー
貝塚由美子氏 国際金融公社(IFC) 上級人事担当官

☆パネルディスカッションの様子

☆パネリストの皆さま

約1時間にわたるパネルディスカッション「エントリー~ミッドキャリアレベルの国際公務員に求められる資質とは何か?」では、パネリストの方々に、入行前の経歴・バックグラウンド、入行後の業務内容、国際機関でキャリアを構築するために必要な力、採用や人材育成についてお話いただきました。以下が主な内容です。

<採用・人材育成>

  • 自分のやりたいことをみつけて、それに合致する組織を探すのが肝要。それぞれの分野で専門性を極められる可能性があるので、技術的分野にこだわる必要はない。
  • 世銀、IFCには寛容に人を育てる風土がある。つまり、多様性を活かしながら育って行けるように、マネジメントチームは個々のスタッフのキャリアディベロップメントについて議論している。部署に配属された後でも、Development Assignmentといって、違う職種や部署に短期間スタッフを送るということも頻繁に行っている。
  • 入行に際しては、面接を突破することが最大のポイント。いかに相手のニーズを理解し、自分の強みをどうアピールできるかが重要。特定のタイプの人ではないと入行できないということではなく、応募するポジションにもよる。また、今日参加されている参加者の方々は、学生の方も多いので、Analyst ProgramやYPP (Young Professional Program)、GTT (Global Transaction Team) などのプログラムの内容をよく精読して活用してほしい。各ポジションの募集内容は、他の組織の募集要項と比較しても非常に詳細に書かれているので、内容を精読してしっかりと下準備し、職務経験がある場合は、自分の経歴と募集要項の類似性を確認してほしい。
  • 公募しているプログラム以外では、正規職員のポジション募集よりも、各部署において、Short Term Consultant (STC) で入る人が圧倒的に多く、インフォーマル(募集要項がWebなどに公示されないで募集がかかる)な採用プロセスが多い。遠慮せずにもっと積極的に動いて、自分を売り出すべき。とにかく頑張ってネットワーキングを続けることが大切。 STCとして採用されたら、大切なのは、与えられた時に、与えられたことだけでなく、+αをこなすことが重要。また、周りに遠慮せずに、他の部署など色々な人に話を聞きに行くなど、学ぶ姿勢と自分の興味やキャリアパスを模索していく貪欲な作業が必要。
  • 採用側の視点からすると、(採用する側が日本人であっても)自分のプロジェクトのために採用するのであって、採用する人をまず日本人からということはまっさきには考えない。まず(現地の実情を良く理解している)現地人の採用を考える。そこを勝ち抜くには、専門性が大切。特に、計量分析などの具体的なスキルが強い。最初は、短期(15日~数か月)でその人が仕事に即した専門性と実戦能力を備えているか、プロジェクトに使えるかをモニターして、そのパフォーマンス次第によって、契約期間を伸ばすという目論見で採用する。
  • IFCはもう少し民間に近く、2~3年の職員契約形態が通常。短期で採用したSTCをプロジェクトチームに加えて、プロジェクトを回すというよりも長期のプロジェクトを一緒のチームで回していくというスタイル。面接の際には、Professional Firmsでの経験があれば重要視される。

 

<国際機関で生き残るのに必要な力>

  • 突破力と人間力。クライアントと良好な関係を構築するのが非常に重要。民間企業に比べて意思決定プロセスが長いが、官僚的な決裁プロセスにめげず、最後までやりきる力も必要。
  • 復元力 (Resilience)。 世銀グループは途上国支援がもともとであり、最近は脆弱国 (Fragile States) での仕事も多くなり、相手国政府相手の仕事は思っているように物事がうまくいかないことも多い。くじけそうになるが、その国の人はもっと大変な思いをしていることを考えながら、粘り強く仕事をする力が求められる。
  • 限られた内部のリソースを奪い合う中で、論理的ににチームや上司、様々なバックグラウンドの人たちと、違いを認めながら折り合いをつけて、実質的に物事を進める力。
  • 確かな専門性がないと、世銀のような専門家集団のなかでは残られない。自分のブランディングがしっかりできて、チームを編成する時に自分の存在を思いついてもらえることが大切。合わせて、自分自身を覚えてもらえるようにアピールする力も必要。
  • 特にワシントンベースの仕事は、仕事の種類にもよるが、往々にして出張が多いケースが多々ある。出張は時として体力的に想像を絶する辛さ(昼間は現地で業務をこなし、夜はワシントンDCとのやりとりを行なう)であるため、そんな中でよいパフォーマンスをし続ける体力は必須。激務で家庭が崩壊する人もいる。バランス力も大切。
  • 燃え尽きないこと、そして、何より仕事が好きなこと、楽しむこと。
  • 実務を通して学び、スキルに替えて行く力、そしてそれを継続していける力が重要。好奇心。
  • 判断力、すなわち状況に応じて即断できる力、は大切。これは、もともと判断力のある人、ない人がはっきり分かれている。普段から意識をし、判断力を常に磨き続けることは大切。
  • コミュニケーション能力・判断力があり、多様性の中で自分を出して引っ張っていける人が国際機関でキャリアを構築できる。

パネルディスカッションの後、各パネリスト別の分科会では、約1時間にわたり、活発な質疑応答が行われました。セミナー終了後は、世銀の若手職員も加わり、参加者との懇親会が行われました。

☆分科会

今回のキャリアセミナーをきっかけに、参加してくださった皆様の中から、少しでも多く、将来の国際開発金融機関職員が生まれることを期待しつつ、当フォーラムは今後もこういった機会を提供したいと考えています。

ご来場の皆様、ならびにWeb配信を視聴してくださった皆様、誠にありがとうございました。