第252回BBL開催報告:5月19日(木)『国際援助システムとア フリカ―ポスト冷戦期「貧困削減レジーム」を考える』

2016年5月19日(木)、DC開発フォーラムでは、古川光明氏(国際協力機構(JICA) 南スーダン事務所長)をお迎えして『国際援助システムとア フリカ―ポスト冷戦期「貧困削減レジーム」を考える』をテーマにBBLを開催しました。

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プレゼンの主な内容は、

● プロジェクトの氾濫(極めて多くのプロジェクトがドナーごとに異なる実施手続きによって行われていることが、途上国に重い負担となり、また援助効果を妨げている)は、途上国政府への負担と開発援助の非効率性を生み出しており、途上国政府の行政能力を損ねるものであるとの共通認識が形成されてきた。2005年のパリ援助効果宣言により、貧困削減レジームと一般財政支援へシフト。

● これまで検証されてこなかったプロジェクトの氾濫の伴う援助の有効性、一般財政支援の効果について実証分析を行った。分析から得られた示唆は次の2点。(1)セクターによって異なるものの、援助依存度の高い国(特に低所得国)では、プロジェクトの氾濫を改善することにより効果が上がることが検証された一方、(2)プロジェクトの氾濫の改善を可能にするはずの一般財政支援については、低所得国の予算に影響を与えるものの、成果は発現していない。

● 貧困削減レジームによる開発援助実施体制の変容を、援助の優等生であるタンザニアのケースを用いて紹介。政策へのアクセス権の変化による途上国政府内のパワーバランス及びドナー間関係の変化、「援助の政治」(中央レベルでの開発計画、予算編成、管理・評価)と「実施の政治」(ドナー関与を排除した国内政治による事業実施)への二分化等。また、DACドナーによる援助効果向上の取り組みから逸脱した中国が台頭してきたが、タンザニアは、相反する開発支援受け入れを可能にする独自のフレームワークを策定して対応してきた。

● 貧困削減レジームは、途上国の行財政管理能力の強化、政策対話構造等の強化などの効果をもたらしたが、今後は実施の政治にいかに踏み込むかが課題。

質疑応答では参加者との活発な議論・意見交換も行われました。