第16回DC開発フォーラムワークショップ「テクノロジーをラストマイルに届ける ~コペルニクの挑戦」議事録

DC開発フォーラム 第16回ワークショップ「テクノロジーをラストマイルに届ける ~コペルニクの挑戦」議事録
【プレゼンター略歴】
中村俊裕さん:コペルニク共同創設者・CEO。国際開発援助で10年以上の幅広い経験をもつ。国連時代は、主に東ティモール、インドネシア、シエラレオネ、アメリカ、スイスを拠点とし、国連開発計画で働く。ガバナンス改革、平和構築、自然災害後の復興(スマトラ沖地震など)、国連改革などに従事。シエラレオネでは、「開かれた政府」プロジェクトを発案し、立ち上げ、大統領や主要大臣のアカウンタビリティーを強化した。経営コンサルティング会社で働いた経験も持つ。京都大学法学部卒業。英国ロンドン経済政治学院で比較政治学修士号取得。大阪大学大学院国際公共政策研究科招へい准教授。2012年、世界経済会議(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダーに選出された。
コペルニクのプロジェクトのおおまかな流れ:
• テクノロジー・製品をまずウェブサイトにのせる(6つの分野)
o エネルギーと環境
o 水・衛生
o 教育
o ICT・モバイル
o 農業
o 保健
• 途上国で活動しているパートナー団体が、どのテクノロジーが必要かリストから選ぶ
o 各団体が提案書を提出
o クラウドファンディングで個人が資金提供することもあれば、企業が資金提供することも。
o ユーザーはお金を払う:活動費を回収したあとのお金はコペルニクに戻り、それを次のプロジェクトの元手とする
• 別の方法としてテクノロジーフェアも開催
o 15~20、その地域で使えそうな製品を選んで持っていく
o 300~500人の前で製品を説明する
o 優先順位をつけてもらい、人気の高いものを届ける
• ラストマイルに届ける方法
o 現地団体の人がエージェント(販売代理店)となる
o まず本人が買って使ってみる
o エージェントは売るごとに手数料がもらえる
• インドネシア、インド、ケニア等で活動。東北にも、ライト2200個、補聴器50個(太陽光で充電できる)等を届けた
• インパクト(開発効果)の評価
o テクノロジー・製品の導入前と後での変化をはかる
o ソーラーランタンによって、灯油に使ったお金が14ドルから1ドル以下へ。それに加え、内職をする家庭の数が増えた
o そもそも製品についても採点してもらい、具体的な改善案も聞く
o すぐに壊れて大不評だった製品も。
o 全てのフィードバックをウェブサイトで公開している
o インパクト評価を最初は欧米大学院の学生を「フェロー」として現地に送り込み行っていた
o フロントラインSMSを使うと携帯ベースで回答が集められるので、今後はそれでコスト削減およびユーザーとの直接対話を図る
• シードコンテスト
o 日本の企業の人からコンテストでアイディアを募集
o 現地の農家に住んでもらって、課題を探してもらう
o 今はコペルニクからは独立した団体として行われている
• ナインシグマと共同で海水の淡水化、煙の出ないコンロを募集
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【質疑応答】
• 質問:SMSでのアンケートで言語などの問題はないのか?
o レスポンスレートは50%くらいで悪くない
o ただ、方言等は難しい
o 聞く質問を、その人達に有用にできるかがポイント
o 160字以内でコペルニクの紹介、質問、選択肢を詰め込むのは難しい
• 質問:今後の経営課題は?
o 途上国向けテクノロジー分野での課題の一番はDistribution。製品よりも、いかに届けるかが重要で、コペルニクは引き続きここにフォーカス
o コンテストをしても、商品化は100個に1個あるかないかかもしれない。あまりリソースは避けない
o インパクトをいかに測るかも課題
o あとは、コペルニクのネットワークを使ってできることを企業相手のビジネスとし、事業を安定させる
• 質問:日本のメーカーの可能性は?
o インドネシアなら日本の3分の1のコストで製造できる。日本のコストでは高すぎて売れない。デザインが日本でも製造は途上国でしないと。他に選択肢はないのでは。
• 質問:企業が採算をとれるところは最貧層ではない。市場メカニズムが使えないラストマイルにはどうやって届けるのか?
o だからこそラストマイルに焦点を置いている。
o 情報だけではなく、輸送費を重ねると高くなって買えない
o Money saving, makingの商品なら金融商品を重ねて可能性があるが、水などの付加価値商品は難しい。なのでNon profitでやっている
o ただ、最初30%補助金を出してたものが評判が良くて、2年かけて値段が上がった例もある。その例ではコペルニクはひいて、現地の女性が直接サプライヤーとやり取りしている。
• 質問:どれくらいの人数でまわしているのか?儲かっているのか?
o フルタイム15人。みんなローカルサラリー
o 今3年目。収入は1年目から2年目が2倍。2年目から3年目が30%増。
o 収入は現在はほとんど寄付。企業からの寄付が70~80%
o プロジェクト1つ80万円くらいで何千人かにリーチできる規模。あまりお金は要らない
o 出るお金は人件費、移動費、事務所の家賃、ウェブサイト、弁護士等
• 質問:プロジェクトにかかる時間は?
o プロジェクトによって全然違う。寄付がどれくらい早く集まるかによる
o 一番早かったのは津波の被災者支援。一番遅いのは2年たってもまだ始まらない
• 質問:それぞれのコミュニティのサイズは?
o 80~100万円で500世帯くらいにリーチする
• 質問:世界銀行などの国際機関と、従来とは違う協働の方法はないのか?
o 政府機関以外の資金源を目指してきた。ただ、今後は可能性があると思う。
o インドネシアのPNPM(政府プロジェクト)が国中に入っているので、それを通じて届けられないか考えている
• 質問:地方自治体との関係は?
o 現地のパートナーが近い関係を築いている
• 顧客からのホットラインは?
o 基本は現地団体を通じて不満等を把握。
o しかし、現地のパートナーがエンドユーザーに遠いこともざらにある
o だからSMS等で直接聞ける仕組みを作るようにしている
• 現地のテクノロジーは使わないのか?
o 現地でいいものがあるかどうかは毎回探している
o 調理用ストーブは悩ましい。モノによっては比較的簡単に粘土で作れる。ただ、燃焼効率や耐性の試験はラボなどで行う必要がある。
o MITのD-Labがテクノロジー評価をはじめたので、連携をしてくれることにはなったが、時間もかかるので全てには適用できない
• 値段はどうやって決めるのか?
o 現地パートナーが決める。最貧層が排除されない価格で。
o 同じ地域でも段階をつけている場合がある。
• クラウドファンディング(個人からの寄付)の概要
o 個人からの寄付の成長率は企業よりも小さいので割合としては低くなってきている。企業の方が資金規模は大きいし早い。
o 個人の規模は20~25ドル。日本人は10ドルくらい。
• テクノロジーを使い終わったあとの廃棄は?
o リサイクルは今はっきりとした答えがない。
• 寄付先へアウトプットの報告をどのように行っているのか
o 動画が効果的
• 国全体にどうすればヘルス・イノベーションで広げられるか。公的資金に頼ることなく。
o 地域を細かく切って、それぞれをうまく使う。一個一個管理するのは大変だから、管理はまとめてやるが。
o 薬を配るのと、ソーラーライトは違う。クリニック等にどうインセンティブをつけるかは難しい
• インドネシアのPNPMのような大規模なプロジェクトをどうすれば10カ国、20カ国の規模に広げていけるか?
o PNPMプロジェクトでは、Small grant(小さな額の補助金)で、ボトムアップで小さなプロジェクトをやる。でもまずは資金が必要。そういうことを10カ国への規模へどうスケールアップできるか?いかに個人を巻き込むかが肝要かもしれない。アメリカの寄付市場は75%が個人。Kivaのように個人に利益を返すことも考えてはいる。返ってくることで、参加感が生まれる。
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ワークショップ後はネットワーキング等々を目的とした懇親会が行われました。
会場参加者は約20人、Ustream閲覧者は約15人でした。ご来場、閲覧して下さった皆様、誠にありがとうございました。今後もよろしくお願い致します。

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