2003年12月16日BBL概要


開発問題に関するマルチとバイのアプローチについて


12月16日のDC開発フォーラムBBL「開発問題に関するマルチとバイのアプローチについて」は、IMF副専務理事の杉崎 重光氏をキックオフスピーカーとしてお迎えして行われました。

杉崎氏からは、その豊富な国際開発・金融分野での経験を踏まえ、現在の国際開発・金融の潮流、そこにおけるマルチとバイのアプローチ、日本が本来果たすべき役割等について意見を頂きました。会場での杉崎氏からの意見及びキックオフの後の参加者との議論のハイライトは以下のとおりです。

1. 2000年のミレニアム国連総会で合意されたミレニアム開発目標(MDGs)は、世界の援助戦略の基本ベースとなりつつある。そのMDGsの基本哲学および各目標、特に貧困削減は現在のマルチの援助アプローチの根幹を形成している。実際、IMF・世銀では貧困削減戦略ペーパー(PRSP)が国別戦略のガイドラインとなっている。MDGsを達成するためには、いかにバイの援助アプローチをMDG戦略に沿ったマルチのアプローチと整合するかが大きな課題となる。

2. MDGsへの期待が高まっている一方で現実は極めて厳しい。世界レベルでは第一の目標:極度の貧困及び飢餓の半減が可能であるが、地域レベルではMDG全体の達成にバラツキが見られる。アジアの国ではいくつかの目標達成が可能であるが、アフリカのほとんどの国では目標達成は不可能というのが現状である。

3. 治安、ガバナンス、民間投資、貿易といった分野で多くの問題を抱えるアフリカ諸国の経済成長・貧困削減を支援するためには、何が必要か。マルチ・バイのアプローチといった今までの二分論で対応できるのだろうか。

4. 長期的には、経済成長・貧困削減には民間資金の投入が不可欠である。IMFの大きな役割の一つは、民間投資を促進するための政策アドバイス・技術協力といった環境整備を支援することである。

5. 日本の援助機関はIMF・世銀のPRSPプロセスにもっと積極的に関与するべきである。そのためには、早急な人材の育成・環境整備が不可欠である。組織体制、意思決定プロセスとしては「中央集権主義」から「現場主義」への移行が求められる。

6. 開発援助の意思決定プロセスには、「顔の見える援助」、「お土産援助」、「外交的配慮」、「日本の経験」、「コクサイコーケン」といったドナー側の視点よりも、途上国の経済成長・貧困削減には何が必要かといった視点がもっと反映されるべきではないか。

7. 日本のODA体制においては「中央司令塔」の存在が必ずしもよく見えてこない。現体制では、組織レベルでも個人レベルでも、日本の援助戦略・政策を国際舞台で明確にできる存在がないという印象をがある。国際援助省(庁)或いは開発問題担当大臣などをつくることで援助戦略・政策の一貫性、国民からの支持・コンセンサスが図れるのではないだろうか。そもそも「開発援助」と「外交」は違う、外交官が開発援助をリードするには限界があるのではないだろうか。

8. 国際援助庁構想の類に関しては、各国の例に見る限り、それなりに当該国内の世論の盛り上がり、就中、世界の貧困と開発の問題に対する関心の高まりが前提として必要である。

9. 日本社会とはそもそも変化の起こりにくい社会であり、世論の盛り上がりなど待っていてはいつになるかわからない、むしろ、そのような世論も盛り上がりを慫慂するためにも、思い切った措置が必要。

以上の論点をはじめとして、現在の世界の援助潮流の中でIMFと日本はそれぞれの援助協力をいかに効果的な形で展開するか、そのための政策提言や具体的なアイディアなど、短いものでも結構ですのでinfo@developmentforum.orgまでご意見をいただければ幸いです。

コミュニケーション&アウトリーチ担当 早川元貴)

Top