2003年5月21日BBL概要


企業利益と開発効果
−IFCは如何にそのギャップを埋めているか−



5月21日、ワシントンDC開発フォーラムBBL「企業利益と開発効果 −IFCは如何にそのギャップを埋めているか−」が約10名の出席を 得て行われました。

冒頭、東眞理子氏(国際金融公社(IFC)信託基金局課長)より プレゼンテーションがあり、その後の出席者間の議論で様々な意見が 出されました。

冒頭プレゼンテーション及び出席者からの意見のうち、主要なものは次の通り です(順不同)。

(1)1957年のIFC創立当初、途上国にお金を貸そうという国際機関、民間の機関は とても少なく競争はほとんどなかった。80年代にはいって規制緩和などにあいまって 直接投資などが盛んになり、途上国に流れる民間資金がODAの数倍になった。 また、各地域開発銀行も、民間への投融資部門を持ち始め、IFCが唯一という時代 から商業銀行やIFIとの競争にさらされるようになってきた。同時に途上国における 民間企業への投融資が現地の人たちに利益をもたらしていないという批判が顕在化 してきた。プロジェクトにお金を投資融資するだけではなくて、プロジェクトの外まで 関与するべきではないという声がNGOや現地政府からでてきた。それを受けて、 IFCは自己の役割を見直し、技術協力がメインストリーム化してきた。

(2)IFCが技術協力を行うに当たっての基本原則は次の通り:(ア)技術協力は IFCの本来の業務を置き換えるものではない、(イ)透明性の確保。イニシアティブは あくまでも民間にあること、(ウ)民間企業として自立させるための多様なモデルを 試すため技術協力はその手段でもある、(エ)他のケースへの応用性。

(3)技術協力の種類としては、(ア)特定業種に関連する政府、地方公共団体 へのアドバイス、(イ)セクター調査、(ウ)Feasibilityスタディは基本的には 被援助国に任せるが、困難があるようだったら補完するかたちでサポートする、 (エ)投融資案件がらみのTA、など。

(4)現在、IFCポートフォリオ全体の40%の投融資が金融セクター。よって 金融セクターへの技術協力も多い。例としては、(ア)銀行員の訓練、(イ)マイクロ・ ファイナンス銀行への支援、(ウ)リース業、など。

(5)特にに金融分野において日本人の専門家をIFCで登用したい。 特に債券市場の育成など。個人でもいいし、企業単位でもアドバイザーを探している。

(6)技術協力を行っているのはIFCのみならず、他の多くの開発援助機関が 行っている。IFCが技術協力を行うのは、基本原則としてIFCの投融資案件に からむものに限定しているので、そこで各機関とのデマケーションができる。

(7)IFCのマインドとしてはトラストファンドに対してあまり積極的ではない のではないか。トラストファンドを利用すれば、長期的な良いプロジェクトも 実施できると思うが、民間を相手にしていることもあってどうしても近視眼的に なりがちで、トラストファンドをうまく利用しきれていないように思う。

(8)技術協力に関して、IFCは下流から上流への方向性があり、世銀は またその逆であると思う。下流から上流へ向かおうとすると、より様々な 衝突が多いかと思うが、世銀との連携についてはどうなっているのか。

(9)開発援助パラダイムの変遷として、70年代はインフラ特化型、80年から 90年は民営化が主流であった。これからはどうなるのか。

(10)現在のIFCのポートフォリオの40%は金融セクターが占めているが、 以前、民活インフラに力を入れていた頃はインフラ関連が40%ほどを占めていた。 今また多少テコがふれてきてはいるものの、インフラ関連事業は減少してきていて、 ニーズに対応していない。対応策としては、タジキスタンのエネルギー案件のような 成功モデルをもっと作るというのがひとつ。もうひとつは中央政府へインフラの 重要性について働きかける、などが考えられる。

(11)IFCの投融資案件は民間企業が主体なので、企業利益と開発効果の 狭間でIFCが民間企業のサポーターになってしまわないかという懸念はないのか。 また、開発効果をどのように正当化しているのか。

(12)最初は民間への補助金であるものを、いかに開発効果があるのか、それを ドナーに説明するにあたって実際苦労することも多い。IFCの役割を考えながら、 なるべく公共財的になるようにプログラムを組み替えていく。FeasibilityStudyの 一部は公開するなど。公共財的性格が大きいほど、ドナーの理解は得やすい。 法整備など効果がでるまでに時間がかかるものに関しては、昔ほど簡単には できなくなってきた。近年のODA予算削減に伴って、結果が早く目に見えやすい ものではないと予算がおりにくくなってきたという現状があるので、せめぎ合いの 交渉が行われている。

(13)日本の役割についてだが、保健教育分野でなにかできないか。日本の 民間にも思い切ったスポンサーが出てこないか期待している。ひとつのアイディア として、分野と問わずコンサルファームとスポンサー、ディベロッパーなどを、 あえて区別しないで、コンサルをやるところに将来スポンサーになりうるような 企業が入れるような(将来のスポンサーを現在コンサルとして取り込む)体制を 作るというのはどうか。

(14)日本政府と国際機関とローカル(途上国)、このトライアングルを意識した 枠組みを作れないか。人材育成や登用にしても、いかに現地のローカルに強いか ということが重要。トライアングルをうまく作るようなシステムを構築し、そこに補助金を もっていくなどしてローカルとの繋がり強化のための仕組みづくりをしたらどうか。

以上の諸点をはじめ、日本として取り組むべき課題や、議論を聞いての感想など、短いものでも結構ですのでinfo@developmentforum.orgまでご意見をいただければ幸いです。

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