2003年3月17日BBL概要

日韓の高度成長における教育の役割から学ぶ援助のあり方
3月17日、ワシントンDC開発フォーラムBBL「日韓の高度成長に おける教育の役割から学ぶ援助のあり方」が、約10名の出席を 得て行われました。

冒頭、明治学院大学経済学部助教授 神門善久氏からのプレゼ ンテーションを受けて、日韓の高度成長における教育の役割が 途上国援助へ適応可能であるか等も含め、出席者間の議論で様 々な意見が出されました。

冒頭プレゼンテーション及び出席者からの意見のうち、主要な ものは次の通り です(順不同)。

(1) 生産年齢人口の平均就学年数で教育水準を測り、これ をもとに、米国、日本、韓国について約100年間に亘り関連 データを出したところ、韓国は日本の経験の短縮版であると分 かった。
1.両国とも初期時点で経済水準に不釣合いなほど高 い教育水準を実現していた。
2.両国とも中等教育を積んだ若 年層に恵まれた時期に、製造業(特に重工業)を中心とした高 度成長を実現した。この時期は、総人口における15−39歳 人口が急拡大する時期と重なる。
3.両国とも初等中等教育の キャッチアップを優先した。
4.教育段階別の平均就学年数を 比較すると、日本の高度経済成長期は、高等教育で見た場合、 キャッチアップがとまっている。韓国に関しても、重工業化の 時期に高等教育がスタグネートした。5.平均就学年数の増加 につれて男女差が減っていく。これも日本のたどった道を韓国 が短期でたどっている。

(2) 日本と韓国の経験はそのまま途上国に当てはまるのは 危険である。軍隊が工場をやっているようなものであり、これ が21世紀の第三世界で当てはまるかは疑問。日韓が出来たの は、国民の同質性が高かったことによる。また、今後10年か 20年すると、農業と工業が一緒になり、ものづくり産業と情 報産業が連関するので、重工業化に依存しないキャッチアップ も想定される。

(3) 教育の貢献を客観的な情報として持っておくことは重 要。われわれは日韓と違う形を考える必要があり、経験を直接 当てはめない方がよい。しかし、20世紀型のキャッチアップ をしっかりと理解したうえで、21世紀型のキャッチアップを 考える必要がある。

(4) 日本韓国で実業教育が役立ったからといって外国に持 ってくるのは問題。日韓の経験は事情が違う。韓国は軍隊が相 当な職業教育になっている。日本も戦前相当職業教育をやって 、それが戦後に生きている。日本は青年学校が1940年代に あった。戦後の3K式の工業化には役立った。途上国支援では 、1950年代から、実業教育を支援してことごとく失敗した 。それは、現場との距離が遠いところでトップダウンで教えた こと、途上国の側もエリートになりたいというかすかな夢を持 って教育を受けるので、職業学校に入るのはモラルが低くなる ことが理由である。

(5) 500年前にハングルを作ったが、末期の李朝ではハ ングルを使う人はいない。その現実の中で、日本は植民地統治 をした際に、日本と同様の教育を行おうとした。その次期に、 初等教育の水準が16%から38%に上がったことは、何を意 味するのだろうか。外部からよその国の教育をどう支援するの か考えさせられる。イスラム文化の中での教育など、かなり慎 重論に立っている。

(6) 今後のキャッチアップは重化学工業ではないとすると 、相当高等教育に依拠せざるを得ないだろう。工業の規模の経 済が強くなり、大量生産すればコストが下がる時代になった。 今後は、いかにしてまとまったマーケットを押さえるかが戦略 事項になり、国単位ではない領域を21世紀には考えなければ ならない。

(7)  韓国の指導要領は日本の指導要領のコピーであり、 歴史教科書は国定教科書である。北朝鮮の脅威から韓国は北に 勝たなければならないということで教育に力を入れた。また、 日本に追いつけ追い越せという意識のもと、日本は60年が韓 国は30年で達成したということはわかる感じがする。

(8)  ジンバブエでは、識字率は80%を超えていたが政 府は腐敗しているためにいくら教育水準が高くても発展に結び ついていない状況を目の当たりにした。教育の目的が国毎に何 なのかを考える必要があるが、途上国自身が考える力がないの で、いくら就学率を上げても工業化には結びつかない。国によ り初等教育か実業教育か高等教育でのエリート養成か、ターゲ ティングは途上国自身の戦略によるものであり、先進国ががた がたいう筋合いはないのではないか。

(9)  この先5−10年、日本韓国米国が北朝鮮の援助に 中心的な役割を果たすのではないかと思う。北朝鮮が開放して 情報がオープンになった時にきちんと政策提言が必要。具体的 には、比較的早い段階で開放経済に向かうのであれば、工業化 による経済成長があてはまるのではないかと思う。青年学校の ようなものでも、戦後の工業化に役に立った。

以上の諸点をはじめ、日本として取り組むべき課題や、議論を聞いての感想など、短いものでも結構ですのでinfo@developmentforum.orgまでご意見をいただければ幸いです。

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