2003年2月6日BBL概要

ラテンアメリカの開発における日本の役割
−東アジア・ラテンアメリカ協力も視野に入れて−


2月6日、ワシントンDC開発フォーラムBBL「ラテンアメリカの開発における日 本の役割−東アジア・ラテンアメリカ協力も視野に入れて−」が、約30名の出 席を得て行われました。

冒頭、米州開発銀行(IDB)理事(初代IDB東京事務所長、元国際局審議官)の上 田善久氏よりプレゼンテーションがあり、その後の出席者間の議論で様々な意 見が出されました。

冒頭プレゼンテーション及び出席者からの意見のうち、主要なものは次の通り です(順不同)。

(1)中南米では、1990年代に、アジア型とは異なるワシントンコンセンサス をベースにしたダイナミックな改革が行われ、軍事体制・閉鎖経済と正反対の 民主体制・開放経済が実現した。地域紛争もおさまり、それだけで改革の成果 が充分にあったと言える。クーデターがなくなる一方で、ハイパーインフレも 収まり、地域統合進む中で市場も開放されてきている。

(2)日本はアジアの経験をアピールすることが多いが、中南米という地域、 そしてIDBという国際機関のスクリーンを通してアジアの経験を見ることも重 要である。

(3)日本はアジアから唯一のIDB加盟国であり、IDBを通じてアジアの視点を 紹介し得る立場にある。また、日本だけを紹介するのではなく、日本と他のア ジアを一緒にして紹介することを通じて、通常のバイの援助にない付加価値を 提示できる。

(4)アジアと中南米は双方から学ぶことができる(例えば地域統合のあり 方)。

(5)日本では、中南米について、出稼ぎ労働者や、その対極のフジモリ大統 領などに目が行きやすいが、中南米社会の中で日系人が幹部・中堅として立派 にその国の中で働いているといったことが日本にとって重要である。IDBの ジャパンプログラムではそのような人に焦点を当て、教育など各分野で国を超 えて中南米のアジア系、更にアジアとのネットワークを構築する作業を行って いる。

(6)中南米では、90年代の改革方針が揺らぐことはないが、改革のメリット が社会全体に均填されていないことが問題となっている。ガバナンスを含め、 どのように改善していくかが課題である。

(7)中南米はアフリカや南アジア等と異なり各国は国全体として比較的豊か であり、かつそれなりの富裕層がいるので、日本から何故支援が必要なのかと いう点について疑問を持っている。皆さんのお考えを伺いたい。

(8)中南米で、20か国もの民主国家が同じ文化と言語を共有して安定した 大陸を構成しているというのは、世界にとって貴重な財産である。中南米の 各々の国が国民から信頼されるような政府を持ち、更に安定的なシステムを築 いていくことを支援するのは、日本にとっても有益である。

(9)中南米は制度としての民主主義が整備されているが、アジアではこの面 で問題が多く、経済危機後もガバナンスを抱えている国がある。中南米と比較 してみると、アジアの知見のもろさが非常によく見える。

(10)日本にとって何故中南米が重要かという問題に結論を出せるほど、十 分な関わりを持っていないのではないか。

(11)ジャパンプログラムの一つの特色は、開発体験をひとつのパッケージ にして東アジアからラ米に移植しようとする点である。個別の技術を移転して も記憶されないが、アジアではこうやったという血の通った体験を持っていれ ば、中南米の人達の考えに影響を与えられるのではないか。そもそも、開発援 助は、自らと同じ思想・発想を他国に輸出しようという側面がある。

(12)経済開発については国際機関に委ね、日本から中南米へのバイの支援 については市場と資源の確保を中核とすべきではないか。これらの面で、中南 米はポテンシャルがある。

(13)中南米は国内に欧州系と先住民の差や貧富の差を抱えている中で、人 為的に国境が引かれていることから、日本とは国づくりに対する考え方が異な る。日本との関係を考える際に、バックグラウンドの違う日本人がどのように 中南米の状況を理解し底辺の人達を支援できるのか、難しい課題だと思う。

(14)アジアと中南米は、太平洋という同じ海を見ているという視点も重要 である。環太平洋諸国として、文化は異なっていても自然環境で共通する面が 多い。例えば、地震など災害対策面での協力があり得る。(実際に日本の支援 の重点分野であるとの指摘あり。)

(15)日本経済が厳しい中、本来は企業で中南米関係を担当する若い優秀な 人が会社を見限って、IDBの世界に来る人が増えている。しかも、企業での経 験を通して開発哲学を持ってくる人も多い。中南米について、夢も希望もやる 気のある多くの人達が開発関係者の議論・世界に注目している。

以上の諸点をはじめ、日本として取り組むべき課題や、議論を聞いての感想など、短いものでも結構ですのでinfo@developmentforum.orgまでご意見をいただければ幸いです。

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