2003年1月9日BBL概要

USAIDから見た日本の援助

1月14日、ワシントンDC開発フォーラムBBL「USAIDから見た日本の援助」が、 約30名(!)の出席を得て行われました。

冒頭、USAIDグローバル保健局のティム・マインキ氏と、JICAケニア事務所 (USAIDより出向)のクリス・ピルカベッジ氏からのプレゼンテーションがあ り、その後の出席者からも様々な意見が出されました。

冒頭プレゼンテーション及び出席者からの意見のうち、主要なものは次の通り です(順不同)。

(1)日本の援助の目的は何か、現場の担当者に聞いても明確な答えが得られ にくい。
(2)日本の援助では、誰が意思決定をしているのか外からはわかりにくい。 他のドナー等との効果的なパートナーシップのためには、明確性・透明性が求 められる。
(3)日本の援助の中には、内容の良し悪しは別として、他のドナーの活動と 孤立した形で大規模プロジェクトが行われる場合がある。その際には、必要性 ・正当性等を他のドナーに十分説明しさえすれば、トラブルが避けられる。 フィージブルなプロジェクトを行うことに加え、現地でのドナー協調が重要で ある。
(4)日本との対話には往々にして時間がかかるが、他のドナーは皆忙しい場 合が多い。
(5)日本との協調に際しては、多くの会議が必要となるが、その一方でフォ ローアップが必ずしも行われず、かつ同じ人が出てこない場合が多い。日本に とって、人の継続性、政策の一貫性、意思決定に要する時間が課題である。
(6)日本の援助担当者は、実務から多くを知っていることが多いにもかかわ らず、国際会議やドナー調整会合等では、肩書や言葉などで気後れして、積極 的に発言しないことが多いことが災いしている。
(7)議会との関係については、米国で議会が援助の細目までイアマークして いる現状は必ずしも望ましいものではない。
(8)1994年、米国ではGovernment Performance and Results Act (GPRA)が 制定されたが、人の行動はすぐに変わるものではなく、これが政策実施に反映 さ
れるまでには長年かかっている。
(9)日本では経協ミッションに多数の省庁・機関・部局から参加している場 合が多いが、それがどの程度政策立案・実施に生かされているのかが良くわか らない。
(10)今の援助協調の時代には、比較優位を示すことが重要であり、それを 示せば他のドナーとのパートナーシップ形成が容易になる。逆に、多くのこと について重要だ、関心があるといくらいっても、その内容が明確でなく、意思 決定に時間がかかる場合には、パートナーシップ形成は困難である。
(11)日本は、開発関係の会議を多数主催しているが、一体どの程度効果的 なのか。グローバルなコンセンサス形成という観点からは効果的なのかもしれ ないが、膨大な時間と費用をかけても、具体的な成果につながっているかとい う観点からは、必ずしも効果的でないとの見方もできる。
(12)米国では、NGO、コンサルタント、大学等の裾野の広い開発コミュニ ティの存在がUSAIDを支えているが、日本では開発コミュニティの層が薄く、 その育成が今後の課題である。米国では、ある時期莫大なグラントを国内NGO 等のキャパシティ・ビルディングに提供し、以後の発展の基盤を作ったとの経 緯がある。
(13)日本の援助機関の現地事務所では、ミッションをはじめとする各種出 張者への対応等に時間をとられ、現地で途上国政府や他のドナー等と調整した り幅広く勉強していくための時間がなかなか取れない場合が多い。出張者対応 はどうしても必要な仕事だが、勉強は上司から求められない場合が多く、また 本部に自主的に報告してもなかなか生かされない。
(14)経協評価に際しては、過去の政策・事業に対するネガティブな評価を いかに吸い上げて将来の政策・事業に反映させるかという点が、一番困難かつ 重要な点である。
(15)日本では、評価を専門性の有無に関わらず第三者に委ねようとする傾 向が強いが、これは問題である。内容を良くわかっている人が評価することが 重要との点を十分認識する必要がある。また、日本では、評価を監査と同様の ものとして捉える傾向が強いが、監査は往々にして細目を問題にする一方で全 体像を重視しないことが多く、また将来の政策に反映させるとの点を主眼にお いていない点で、評価と異なる。
(16)米国と日本は良いパートナーであり、相互から学ぶことにより、途上 国の人が利益を受ける。これが日米双方に共通する目標である。

以上の諸点をはじめ、日本として取り組むべき課題や、議論を聞いての感想など、短いものでも結構ですのでinfo@developmentforum.orgまでご意見をいただければ幸いです。

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