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研究ノート
ジャマイカにおける女性社会−ジェンダーが提起するジャマイカ社会の諸問題−(PDF 151KB)
在ジャマイカ大使館一等書記官 大西英之

在ジャマイカ大使館に勤務する大西氏による、ジャマイカが女性優位の社会となっていく中で起きる様々な社会問題を、ジェンダーの観点から考察する研究ノート。

ジャマイカは、1494年にコロンブスによって発見されました。その後、英国の植民地として西アフリカら多くの黒人がサトウキビ生産のため奴隷として強制移動させられ、1962年にようやく黒人奴隷とその混血を子孫とする黒人国家として独立した若い小国です。その歴史的経緯から、ジャマイカは、男と女の役割、男女間格差について、英国等の西洋的家父長制と、奴隷の出身地である西アフリカの母系社会制度が複雑に絡み合った特異な分化を継げています。

本研究ノートでは、この奴隷時代の文化的背景とそれに起因する男女間の性的役割分担を説明し、近年の経済発展の中でジャマイカが女性中心の社会となっていく姿を浮き彫りにしています。その上で、現代のジャマイカ社会が抱える「教育」、「労働」、「母子家庭」、「少年犯罪とHIV/エイズ増加」等の様々な社会問題を、ジェンダー格差という観点から解き明かそうと試みます。最後に、「ジャマイカの女性社会の展望」では、これら社会問題を解決するには、ジャマイカの男女がジェンダーを理解し、女性優位の社会に起きる特有の社会・文化的制約を乗り越える必要があることを指摘しています。
開発や発展において、ジェンダーが如何に重要かを問う興味深い研究ノートです。

当研究ノートを読まれての感想などございましたら、genderjnet@aol.comまでいただけると幸いです。

<目次>
はじめに
1.独立と母系制社会として
2.人口と人口移動
3.「女性世帯主の家庭」の存在
4.教育におけるジェンダー
5.女性の社会進出と職業
6.エイズと性経験の低年齢化
7.ゲットーの存在と少年犯罪の増加
8.ジャマイカの女性社会の展望
後記

過去の寄稿

卒業論文「援助研究におけるジェンダーの視点を再考する −男性への「配慮」の必要性−
慶應義塾大学法学部政治学科 粒良 麻知子