ワシントンDC開発フォーラム
DC Development Forum


国際開発ジャーナル2002年2月号寄稿

ワシントン便り 
「NGOの現状と今後の課題 〜 米国の視点から」

米開発NGO連合体インターアクション、インターン
杉原ひろみ

  この数年、政府・国際援助機関は脆弱な日本の開発NGO組織のキャパシティ・ビルディングを行うため、各種研修・ワークショップを国内外で実施し、日本の開発NGOがここワシントンDCにも訪れている。しかし日本のNGOが抱えている問題はドナーの問題でもあり、小手先のトレーニングだけでは到底解決できないのである。

日米NGOの連携のむずかしさ

 「日本の援助機関とではなく、日本のNGOとパートナーシップを結び、対等な関係で開発プロジェクトを現場で実施したいのだけれど・・・。」

  アフリカで草の根レベルの援助活動を行っている米国NGOからこう声をかけられた。これまで現場でJICAや日本大使館と一緒に仕事をしてきた彼らは、新たな協力関係を日本のNGOと結びたいと考えている。しかし日米NGOのパートナーシップは容易に出来上がるものではない。

 私は在ジンバブエ日本国大使館専門調査員として3年間、主に草の根無償資金協力を担当し、アメリカのNGOや平和部隊と案件形成をすることもあった。任期満了後の2000年、住まいをワシントンDCに移し、現在、160あまりの米国NGOを束ね、ネットワーキング・アドボカシー活動を行なうInterActionのインターンとして、日米官民パートナーシップ(P3)で働いている。このP3プログラムは、いわば日米NGO間の「お見合い」設定の場作りで、私は「仲人」であるが、仲人としての力量を発揮する以前に、日本のNGOから活動の意義と戦略について具体的な説明を受けられず、どのように米国NGOにつなげばよいのかわからない状況にある。なぜなら、日本のNGOの多くは専門性に欠け、米国のNGOとなかなか対等なパートナーシップを結べる状況にないからである。

 日本のNGOの現状として、組織が未成熟で財源も限られており、人事・財務管理が徹底していないことがあげられる。組織としてではなく、個人の熱意とそれに共感する人たちよって活動運営がなされている。また、NGO組織間には活動年数に基づく暗黙の年功序列制や、一部、大学の体育会系サークルに似た雰囲気が文化としてある。さらにNGOの理念・政策・戦略が明確化されていないので、一貫性のある活動ができず、客観的に活動内容を他者に説明できないでいる。つまり国際交流型NGOであるため、開発NGOとしての専門性に欠け、アメリカのNGOと対等なパートナーシップを結べないのである。

NGO支援の課題

 このようなNGOの現状に対して、ここ数年、政府援助機関は開発NGO組織のキャパシティ・ビルディングと称して、各種研修・ワークショップを国内外で実施している。また米国NGOから学ぼうと日本の開発NGOがワシントンDCを訪れている。しかし、アメリカのNGO関係者からトレーニングを受けて学ぶだけでは、現在抱えている問題を到底解決できるものではない。開発NGOはその国の社会構造やシビルソサエティの歴史のなかから生まれ、変化するものであり、また、ドナーと開発途上国政府の力関係によって異なって当然である。アメリカ型アプローチが日本のNGO育成に本当に当てはまるのか、十分吟味する必要がある。 

 そのためにはまず、ドナーである政府および開発援助機関は、「なぜ」、「どのように」NGOとパートナーシップを結び、援助を行うか、明確な政策を提示する必要がある。そして第三者にもわかるよう整合性のある戦略を立てなければならない。このためには、現場を知るための方策、NGOの審査・モニタリング能力の向上、情報収集能力の向上(NGO内外のうわさ、評判など公の会議では話されないことこそが重要)、そしてドナー側組織内部・組織間の調整と情報共有が大切である。

 他方、開発NGOは、国際交流的な開発NGOから脱皮し、専門性を持ち、開発途上国のコミュニティーだけでなく、他国のNGOやドナーとコミュニケーションを図り、交渉能力をつけることが重要である。大学のサークルの延長であったり、開発ツーリズムの大衆化(NGOがお茶の間の人をつれて開発途上国で井戸掘りや学校建設をしたり、日本の病院で余ったベッドを送る等)で良いのか。専門性がなければ、日本のNGOは国際社会でどんどんマージナルな存在になっていってしまう。また、援助にかかわるすべての関係者に対する説明責任を果たすことが重要である。NGOとA村、B村で完結せず、その国の社会経済、セクターを横断しての状況など、実施するプロジェクトの置かれた文脈を考えたうえで、円熟した説明を行う必要がある。

戦略的な開発NGOの育成を

 今は日本のODAの転換期であり、そのなかでNGOが重要なプレーヤーになってきている。NGOの抱える問題は、同時にドナーの問題でもある。昨今、NGO支援のための政府予算が増加しているが、ドナーが明確な戦略をもってNGOと向かい合い、国際社会のダイナミズムの中で開発NGOを育成していかなければ、世界が日本の開発NGOに向ける熱い期待に応えられないばかりでなく、NGO支援が新たな利権となり、それに対する批判が国民から生まれる恐れも考えられるのである。

(本稿は発表者個人の見解であり、所属先の立場を述べたものではない。)

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